「想定内」と「想定外」の話で、一つ指摘しておきたいのは、「駆け込みの反動減」と「増税による直接の影響」とを混同していたのではないか、ということだ。
「反動減」と「増税の直接の影響」の違い
問題の原因は、増税後の景気動向を説明する際に、しばしば使われる「反動減」という言い方の曖昧さだ。消費増税前には安い間に買っておこうという駆け込み需要が発生し、増税後は駆け込みで購入された分だけ、モノが売れなくなるという反動減が起こる(図の2つの三角形の部分)。
97年の消費税率引き上げの際には予想をはるかに上回る駆け込み需要が発生し、それを増税前の景気の実勢と見誤るという失敗が起こった。
駆け込み需要とその反動減が非常に大きいので、その動きに目を奪われがちだが、そもそも増税分だけ販売価格が上がっているので駆け込み需要とその反動減がなくても、増税後には同じ1万円で買える商品の量が減るという、「実質所得の低下効果」がある(図の赤い矢印)。このため駆け込みと反動減がなくても、経済成長には増税時に道路の段差のような一時的な落ち込みはどうしても起きてしまう。
売り上げの減少について、「増税の反動減で」という説明がよくみられる。しかし、「駆け込み需要の反動減」と「増税による直接の影響」がはっきりと区別されず、混同されているおそれがある。
駆け込み需要が予想以上に大きかったという要因は、反動減も大きなものにするが、時間とともにマイナスの影響は小さくなっていく。しかし、増税によってモノが値上がりした効果は消滅しないので、消費が元の水準に戻るためには所得が増税分を賄うだけ増える必要がある。
混同されたことで、後者についての認識が不十分となり、想定が楽観的となったのではないか。そのために、増税後の在庫の積み上がりが大きくなってしまい、回復を遅らせてしまったと考えられる。
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