消費増税、影響が「想定内」でなかったワケ なぜ日本経済の回復は遅れているのか

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東日本大震災の被災地では、建設関連の技能者の不足から復興事業の遅れが問題となっている。日本全体でも建設関連の労働者不足が起こっており、公共事業をこれ以上増やしても大きな景気の下支え効果が期待できない状況になっている。

日本経済の中には、需要が足りない部分と供給力が足りない部分の両方ができている。消費税の増税で大きく落ち込んでいるのは個人消費に関連した領域の需要であり、公共事業の増加で増える分野の需要とズレがあるので、大きな効果を期待することはできないだろう。

増税の影響は本当に「想定内」だったのか

消費税率引き上げ後の状況について、当初は政府関係者やエコノミスト、企業関係者からも、「売り上げは落ち込んでいるが想定内だ」という反応が多かった。だが、次第にトーンが変わってきた。

想定内、想定外という言い方は、2005年に当時の堀江貴文ライブドア社長が記者会見で連発して同年の新語・流行語大賞を受賞し、それ以来おなじみになった。しかし、「想定内」という言葉が使われるとき、そもそもどういう想定を置いていたのかがわからないことが多い。増税後の売り上げの落ち込みが本当に想定内なのであれば、これほど在庫が積み上がらなかったのではないか。

増税後の回復について、私やニッセイ基礎研究所のスタッフはもともと慎重な見方をして、2014年度の経済成長率を予測していた。しかし、それをも下回りそうな状況になっている。

予想以上に回復がもたついている原因は、第1に、ウクライナ問題や中東情勢など海外情勢が緊迫するといった「想定外」の事態が起こっていることだ。第2の原因は、大幅な円安にも関わらず輸出が低迷を続けていること、第3に、増税に対する駆け込み需要とその反動の規模が予想を上回ったことがある。

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