問題が多い少年野球の環境、そして子どもの成長の多様性を認めず、「今」の勝利を求める指導者、これからの人材育成につながらない指導スタイル――。4人が指摘するのはすべて「大人」の問題であり、通底する部分が大きい。実は、ここで紹介した野球人たちは、SNSのグループを作って常時、意見交換をする仲間、同志でもある。
「僕たちは2017年にFacebookにPFFC(Players' future-first Club)というプライベートグループを立ち上げました。少年期の野球は、子どものもののはずですが、いつの間にか指導者や保護者、つまり大人たちの都合で進められている印象があります。日本全国で、学童野球からプロ野球まで、『子どもの将来のために』という志ある方々がそれぞれに考え、全国各地で変革を実践しておられますが、それらを1つに括ることで、相互にエネルギーやアイディアを共有し、大きな変革エネルギーに換えられないか? そう考えてこのグループを創設しました、いわば草の根活動です」
前出の大渕氏は語る。この考えに勝亦氏、星川氏が賛同し、サイトを立ち上げた。また上田氏は設立時からのメンバーだ。
「問題意識を共有でき、小さくても改革に挑戦する輪を拡げていくことが目的で、いろんな人に声を掛けました。参加者の質の維持のために、一応、入会の前提としていくつかの質問に答えていただくことにしました。輪がだんだん拡がっていき、今では558人ものグループになりました。選手、指導者、医師、理学療法士、研究者、ジャーナリスト、父母などさまざまな立場で野球、スポーツにかかわる人たちが、日々SNS上で意見や情報の交換をしています。野球界だけでなくバレーボールの益子直美さんなど、ほかのスポーツの方も参加しています。リモートのミーティングも開いています」
「昭和の野球」から脱却するには
この活動に共感した人の中には、「Players' future-first Club」という名前の少年野球リーグを立ち上げた指導者もいる。静かに改革運動は拡がっている印象だ。
コロナ禍になりZoomなどを使ったリモートミーティングが普及したことで、全国の指導者、野球人たちとの意見交換はかえって容易になった印象があるが、痛感するのは「PFFCに集っている人たちは野球界の現状をよく理解しているが、問題はここにいない人たちなのだ」ということだ。
「昭和の野球」そのままに、罵声、怒声を浴びせたり、投げ込みなど過度な練習を強いたり、「勝利至上主義」に偏重した野球をする指導者は依然として存在しているのだ。むしろそういう人たちのほうがまだ「多数派」なのではないかという印象さえ抱く。世の中は激しく動いているのに、現状に安住し、なかなか変われない日本の野球界は、日本社会の縮図のようにも思えてくる。
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