深刻な「子どもの野球離れ」大人が引き起こす事情 問題山積の少年野球界に対する有識者4人の視点

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現状を憂慮している人の中には、プロ野球の最前線で活躍する野球人もいる。

「仕事柄、学童からプロ野球まで野球現場を視察します。野球人口の減少をはじめ、子どもの体力や遊びの衰退、ケガ増加や競技の習い化、そして指導者のチーム私物化など、野球に限らずスポーツ界や社会の課題を目の当たりにしてきました」

北海道日本ハムファイターズ、GM補佐兼スカウト部長の大渕隆氏はこう語る。早稲田大学野球部出身。高校教員を経て2006年日本ハムに入団。2012年、日本ハムが大谷翔平をドラフト指名した際には、彼を説得するために「MLBとNPBでは育成システムがどう違うか」を説明する資料を作成したことで知られる。

一部のエリート選手は出てくるが…

プロ野球選手のスカウティングから育成までを永年見つめてきたが、仕事柄、全国のアマチュア野球の現状を見る中で、野球少年を取り巻く環境が極めて悪化していると危惧していた。

北海道日本ハムファイターズ、GM補佐兼スカウト部長の大渕隆氏(写真:北海道日本ハムファイターズ提供)

「最も懸念すべきは、子どもの可能性を最大限発揮できる環境を大人が用意できていない現実です。学童、中学、高校とまだ可能性が潜んでいる若年期であっても、その年代ごとのチャンピオンを作ろうとする旧来のシステムは、一部のエリート選手や超〇〇級の選手は出てきても、本来その後活躍できたかもしれない子どもが次のステージで挑戦する希望を失わせる作業にもなっています。結果、日本野球全体を見ると大きな損失となっていると感じています。

そもそも野球という競技特性からも、活躍する選手のタイプは他競技に比べ多様であり、かつ、求められる技術の高さゆえ、成長(活躍)時期が個人によって異なるという特徴が明らかです。よって、早期の優劣判断は人材を喪失する仕組みにもなっており、競技人口減少が顕著な現代においては、『継続』こそ重要な育成ポイントであると考えます。そのためには、幼少期での『楽しさ』の植えつけこそ、その選手がその後継続する原動力であり、もしプレーヤーを断念しても野球界全体に好循環を生むとても重要な作業です。だから、その年代の指導者や環境こそが将来の野球界のキーとなると考えています」

早稲田大学野球部出身で卒業後、スポーツ科学を研究する道を歩んだ東京農業大学応用生物科学部准教授の勝亦陽一氏は、独自の視点で問題意識を次のように語る。

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