DXを進めると組織に「新しい発想」が生まれる理由 実験を認めない企業のデジタル化は掛け声倒れ

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少し誘導尋問っぽい問いかけだと思うが、DXがもたらす成果を考えるヒントになる質問がある。

DXは、目的ですか、手段ですか?

そう尋ねられれば、思わず「DXは目的ではなく手段にすぎません」と模範解答を答えてしまうような気がする。

DXに限らず、手段を目的化してしまう間違いは日常よくある。この手の話はITの世界がわかりやすい。たとえば、ERPを導入する場合、それが手段であるなら、目的は決算の早期化や経理業務のコスト削減などになるだろう。でも、導入そのものを目的とするならば、その手段は優れた方法論を探し、認定コンサルタントを雇うといった具合になる。

では、DXが目的でなく手段とすれば、本来の目的はなんなのだろう。でもそうなると、決まって急に話が抽象的になり、苦し紛れに「競争優位性の確保」みたいな古臭く、そして漠然とした話になるのではないだろうか。

生産性5倍、売上げ10倍を達成したペーパーレス化

DXと聞くと、筆者はその昔PwCコンサルティング(のちにIBMが買収し統合)に所属していた頃のペーパーレス化をどうしても連想してしまう。当時のCEOの倉重英樹氏(現シグマクシス・ホールディングス代表取締役会長)は、ペーパーレスを推進した。それは単なるペーパーレスを目指すというレベルではない。

たとえば、ホワイトカラーの社員1人が所持している紙を重ねたとしよう。どのくらいの高さになるか。そのときの調べでは平均8メートルくらいになるということだった。それをなんと20センチまで圧縮した。ちなみに20センチとは社員ひとりにあてがわれた収納スペース。引き出しひとつ分だった。

まだ若かった私はそれに反発した。「ペーパーレスは手段であり目的ではないです」と自信満々で反論すると、倉重氏は毅然とした態度で「ペーパーレスは目的だ」といわれた。

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