「Zoomが使えない50代課長」が会社に招いた大損失 「え?Zoomって録画できるんですか?」
しかし、このような人口ピラミッドの組織は稀だ。規模とは関係がなく、歴史が長い企業ほどベテラン人材の割合は増える。だからどうしても二世帯組織になるのである。
「二世帯組織」の特徴は、メンバー間の価値観が大きく異なることだ。
「ミレニアル世代」は20代前半から30代後半くらいと言われ、2021年流行語大賞にノミネートされた「Z世代」は、さらに下の世代を指す。
ミレニアル世代が相手ならともかく、Z世代に対して、「テレワークは生産性が落ちる。出勤しなさい」「東京で3日間の合宿研修を受けてきなさい」「明日は午後から半日会議だ」などと言ったらどうなるか。「古臭い」「昭和か!」「効率悪ッ」と受け止められるだろう。パソコンよりスマホ。電話よりショートメッセージを使う世代に、「お客様とヒザを突き合わせて」とか「夜遅くまで働いているヤツが偉い」的な価値観はご法度なのだ。
おじいちゃんやおばあちゃんが、「もっと残業してお金を稼ぎなさい」「男なのに、育休をとるなんておかしい」「離乳食は、親が口の中で柔らかくしてから食べさせなさい」と、子ども世帯の夫婦に口出ししているのと似ている。
単なるジェネレーションギャップなら、対話を繰り返すことで解決の糸口は見えてくる。しかし知識やスキルにギャップがあるなら大きな問題だ。企業であれば、組織成果に関わる無視できない問題に発展する。そう。二世帯組織の特徴は、価値観のみならず、知識やスキルにもギャップがあることだ。
要因は以下の3つではないか、と私は考えている。
①少子高齢化
②働く期間の長期化
③テクノロジーの進化
もちろん「少子高齢化」が最大の要因だ。次に「働く期間の長期化」。人生100年時代。定年制が撤廃されるかもしれない現代。60歳以降の層が分厚くなるのは当然だ。
忘れがちなのが「テクノロジーの進化」である。平成の時代までならよかった。20歳離れた上司から指導されても、受け入れられた。しかし今は環境の変化スピードが速すぎる。速すぎるから、変化を正しく受け入れられない人のほうが多いのだ。
部下育成に悩む50代営業課長の悩み
私が現場で支援をしているとき、ある50代の課長がこう言った。部下育成に悩む、マジメな営業課長だ。
「もっと時間があれば、部下たちにしっかりOJTができるのですが」
この課長はプレイングマネジャーだ。みずからも組織の目標を背負い、部下指導にあたっている。全国の得意先を回ることが日常なので、なかなか部下たちの営業活動に同行できないと言うのだ。
「部下とは定期的に面談しています。しかし実際に現場を見てみないと、正しく指導ができないんです」
このように課長は嘆くが、私の反応は冷めていた。
「だからZoomを使ってオンライン商談をすればいいでしょう。日本全国の取引先と接点を持つのに、3分の1の時間でできます」「時間短縮、経費削減のためではなく、従業員エンゲージメントを上げるためにも、オンラインで商談できる先とはそうしたほうがいい」
これは私だけでなく、部下たちの意見も同じだ。しかし、どんなに説得しても、この課長は首を縦に振らない。
「それじゃあ、私も部下と一緒にZoomに入って、商談を見学しろというのですか?」
「録画機能を使えばいいでしょう。録画した動画を早送りして、大事な部分だけチェックすれば、OJTができますよ」
「え? Zoomって録画できるんですか?」
「そんなことも知らないんなら、若い部下たちを引っ張ることなんてできませんよ」
いろいろ理由をつけては新しいテクノロジーには及び腰の課長。SNSも使わないし、部下との対話は「飲みにケーション」がメイン。これでは若い部下と関係を築くことは難しい。
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