紅白視聴率「歴代最低」を嘆く人に欠けている視点 「日本最高最強の音楽フェス」になれる可能性

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私の考えでは、紅白のターゲットは、ずばり「音楽ファン」だ。

強烈に好きな音楽家がいて、それでも他の音楽家や、最近のヒット曲にも関心を持ち、ずっとサブスクを聴いていて、コロナが明けたら、カラオケに行きたい、ライブに行きたいとウズウズしている人たち――。

そして、そんなターゲットに対して約束するべき紅白のパーパスは「日本最高最強の音楽フェスになること」。

大みそかの慌ただしい時間、それでもあえてテレビをつけて、生で見るべき意味・見なければならない意義のある、音楽ファン必見の「ライブフェス」になること。

「ライブフェス」なのだから、生放送・生歌、そして生演奏を望みたい。できれば生ならではのサプライズがあれば最高だ。逆に、平成時代の紅白で推し進められた「バラエティー番組化」は、もう十分だと思う。

こちらも勘のいい方なら、もうお気づきだろう。そう、私は昨年紅白が、この方向への第一歩だったと思っているのだ。そして、そんな有意義な昨年紅白の象徴が――藤井風だ。

逆に言えば、藤井風のパフォーマンスに意を強くしたからこそ、私は、ここまで述べたような、一見複雑な、しかしよく読めば、至極当たり前かもしれない論を書く決心がついたのだ。

「日本最高最強の音楽フェス」への第一歩

藤井風のパフォーマンスがいかに最高だったかは、私がYahoo!ニュース(個人)に寄せた記事=「『紅白』の歴史を変えるかもしれない昨夜のMVPは?」に詳細に書いたので、繰り返さない。

ただ、昨年紅白をご覧になった方は、生放送(自宅からのシーンは録画)で、激しくも安定的な生歌・生ピアノ演奏、さらには、突然舞台に出てくるという生のサプライズに、理屈抜きに魅了されたことだろう。

先のターゲット論における「音楽ファン」を具体的に表せば、それは、昨年紅白における藤井風に魅了された人々のことだ。

また、藤井風以外のパートも、ほとんどが生放送で、またバラエティー系・お笑い系・タイアップ系のコーナーも少なく、「日本最高最強の音楽フェス」への第一歩にふさわしいものだった。

視聴率うんぬんの話は、必要以上に賑やかにかつ無責任に語られるのだろうが、制作スタッフには、あの方向で迷わず進んでほしい。「音楽ファン」の1人として強くそう思う。

個人的な「夢の紅白」を妄想する。藤井風に始まり、米津玄師、宇多田ヒカル、島津亜矢を経由して、中島みゆき、浜田省吾、竹内まりや(バックに山下達郎)、そしてトリが沢田研二という奇跡の4時間超。もちろんすべて、生放送、生歌、生演奏。加えて、ところどころに生のサプライズ――。

そんなことを考えるといい気分になってきた。視聴率「歴代最低」報道でおとそ気分も吹っ飛んだことだし、「夢の紅白」出場予定者の音楽を聴きながら、酒でも飲んじまうか。いや酒はよしておこう――「夢の紅白」が本当に夢で終わっちまうといけねぇ。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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