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インターネットが「文化資本の格差」拡大させる訳 アクセスの平等は「皆が上手に使える」ではない

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GAFAの存在と同じで、今後はテックを利用できる人とできない人で、格差はどんどん広がるでしょう。

最近は、15歳ぐらいでデビューするシンガーが増えています。かつては下積み時代が必要でしたが、今は、自宅で自分で録音して、ユーチューブに公開できます。優秀な人はあっという間に開花して、どんどん優秀になってゆく。自由であるからこそ、本質的な格差が見えてきたと言えるでしょう。

「望遠鏡的博愛」だけでは解決しない

ここで本書に1つ異論があります。著者のギャロウェイ氏は、動画サービスの企業のうち、ユーチューブは、プライバシーのデータを集めているからよくないという意味で「赤の動画サイト」、一方で、お金を払った人にサービスを提供するネットフリックスは「青の動画サイト」と分けています。

しかし、貧困層から見れば、広告がついていようが、データを収集されていようが、ネットフリックスに月額料金を支払うより、ユーチューブで無料で見られるほうがいいわけで、そのほうが民主的だと言えるのです。

もちろん、常に自由を愛している人にとっては、「プライバシーデータを集めるなんてけしからん」ということになります。しかし、たとえ企業に誘導されていても、それで文化的生活が維持できるならいいという考えもありえます。

明日の食事にも苦労しているシングルマザーが、せめて子どもに、ユーチューブで好きな動画を見せたいという場合はどうでしょう。そう考えると、本書を書くほどのギャロウェイ氏であっても、まだまだ貧困層への眼差しが足りないように僕は感じます。

格差と言っても、アメリカと日本は違います。日本には、アメリカほどの金持ちはいません。中間層はまだいますが、アンダークラスと言われる層が、急激に落ちていっているというイメージですね。

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アンダークラスとは、もともと中間層の下のほうにいた人たちで、シングルマザーなど、非正規になって年収200万円以下になった人々です。生産年齢人口の3割ぐらいいますが、あまり可視化されていません。

昭和の頃は、抑圧があって息苦しい社会でしたが、黙々と働いていれば生活が安定する時代でした。工場の隅で黙々とガラスを磨くなどの単純労働をしている人の姿もありました。地味に生活していれば、コミュニケーション能力がなくても、家を建てられたわけです。

でも今は、みんなが高度な仕事を求められるようになり、どうしてもこぼれ落ちる人がいます。こぼれ落ちると結婚もできず、家も持てません。コミュニケーション能力が低い人は、どう食べていけばいいのかわからないですよね。

本来は、そういうところをテクノロジーで救うことが期待されます。しかし、得てして「地球温暖化」など大きな話になってしまい、ややもすると「それを言っていればカッコいい」という、金持ちの道楽と化すわけです。

イギリスの小説家チャールズ・ディケンズは、「望遠鏡的博愛」という言葉を残しています。近くの問題に目をつぶり、遠くの対象を救おうとする態度のことです。

それ自体が悪いとは言いませんが、「SDGs」と言うなら、日本国内に起きている目の前の貧困を見ないでどうするのかと思いますね。

(構成:泉美 木蘭)

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