経済の立て直しの肝「観光」を見誤った日本の失策 独や英と比べても国内旅行が圧倒的に少ない
モノづくりは日本の得意分野ではあるが、自動車や家電など一部の分野を除くと、国内市場が大きかったために、輸出にはあまり力を入れてこなかった。そのため、国際競争力を高めるにはかなりの時間がかかる。ましてこの20年間、日本経済が停滞し続けていたように、経済規模を大きくしようとするのは極めて難しい。
特に、これまでずっと企業誘致を行ってきた地方にとっては困難な話だ。明治以来の悲願といっていい中央と地方の格差は、縮まる様子がない。限界集落となってしまってから工場を誘致しようにも、工場で働く人にも事欠いてしまう。
モノづくりに代わる産業とは何か
しかし、観光はほかの産業に比べ、多大な時間と投資を必要とせずに活性化し得る分野だ。それだけに、地方にとっては最初に手をつけるべきであり、同時に最後の砦となり得る産業分野なのである。
たとえば、国内旅行は何か「きっかけ」があれば、比較的早くに活性化できる。ほかの多くの消費財は大量生産時代を経て国民すべてに行き渡り、新規の需要は少なく、消費してもらうには買い替え時期を待つしかない。
しかし、国内旅行は日本人が「もういらない」といえるほどには充足していないからだ。「もしお金があったら何をするか、何を買うか」という各種の調査でも、国内旅行はたいてい一番に挙がる。
このことは、コロナ対策として全国民一律に配った10万円の特別定額給付金の使い道の調査にも表れている。
日本生命による使い道の調査(複数選択可)では、「生活費の補填」が53.7%で1位、困窮時の備えとしての「貯蓄」が26.1%で2位だった。政策目的からいって当然の結果だが、3位は10.1%の「国内旅行」であり、4位に「家電製品の購入」(9.7%)と、マスク・除菌グッズなど「衛生用品の購入」(9.7%)が同率で続く。具体的な使い道としては、国内旅行が最も多かったことになる。