経済の立て直しの肝「観光」を見誤った日本の失策 独や英と比べても国内旅行が圧倒的に少ない

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下に掲げた図表は、2018年度のこの3カ国の国内旅行に関係する項目を一覧にしたものである。

3カ国の自国民が行う国内旅行における宿泊日数(自国民が行う海外旅行や、海外からの旅行者の宿泊日数は含まず)を見てみると、日本が2億9188万泊であるのに対し、ドイツでは3億6640万泊、イギリスは3億7170万泊である。これを人口比で見ると、日本を100とすれば、ドイツが191、イギリスは243だ。日本人はドイツ人の52%、イギリス人の41%しか国内旅行で宿泊していない。

国内旅行はドイツやイギリスの3分の1

国内旅行消費額も当然、この数値に比例する。日本人が1年間に国内旅行で使う金額の合計が約20.5兆円であるの対し、ドイツは39.6兆円、イギリスは28.8兆円。日本は人口が両国より多いにもかかわらず、その国内旅行消費額は圧倒的に低い。これも1人当たり国内旅行消費額について日本を100とすると、ドイツは294、イギリスは267となる。率にすると、日本人はドイツ人の34%、イギリス人の37.5%と、両国のほぼ3分の1の金額しか消費していない。

これは単なる「統計上の誤差」や「国民性」の問題に帰せられるような差ではない。

逆に、日本人がドイツ人やイギリス人並みに国内旅行したとすると、日本の国内旅行消費額は3倍になる。別の言い方をすれば、「やり方によっては、一気に3倍にも増大する可能性」を秘めている。しかも、現状でも日本の国内旅行消費額である約20.5兆円は決して小さい数字ではない。たとえば、日本の輸出の屋台骨を背負っているといっていい輸送機械製造(自動車のほか飛行機や船舶も含む)は11兆円前後であり、その2倍もの大きさがあるのだ。

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前述のように観光産業の経済波及効果は2だ。日本人がドイツ人並みに国内観光消費をすれば、単純計算ながら国内観光消費額自体は40.3兆円増え、さらに国全体の産業でいえば2倍の80.6兆円も増える勘定になる。これは約536兆円(2019年)であるGDPの15%にも達する。

日本の国内旅行をドイツやイギリスの半分に押し留めているボトルネックを明らかにして、それを取り除けば、日本の国内旅行は一気にドイツ・イギリス並みになる可能性がある。

筆者らは最大の原因が、遠くに行けば行くほど高くなる「距離制」の高速道路料金にあり、400円走り放題といった「定額制」に移行させることで大きく改善すると考えているが、それについては別の機会にお話ししたい。

栗岡 完爾 トヨタ元副社長

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くりおか かんじ / Kanji Kurioka

1959年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。生産管理や購買、営業など幅広い業務を経験したのち、1996年、トヨタ自動車代表取締役副社長。1999年、千代田火災海上保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)取締役会長、2000年、TFS(トヨタ金融会社)取締役会長、2004年、トヨタ自動車相談役。同年に名古屋商工会議所副会頭に就任し、地元経済界の代表として愛知万博を成功させ、後継事業である異業種交流会「メッセナゴヤ」を立ち上げた。

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近藤 宙時 経営ナビゲーター

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こんどう・ちゅうじ / Chuji Kondo

1981年、中央大学法学部を卒業。同年、岐阜県庁に上級職採用。主に企画・経済振興を担当し、2001年には情報システム戦略的アウトソーシング事業の計画立案により、日経電子自治体大賞を受賞。観光課総括管理監、岐阜市商工労働部次長、情報企画課長、新産業振興課長、企業誘致監等を歴任。現在、中小企業団体中央会専門員、中小企業庁認定経営革新等支援機関、特定行政書士。

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