藤野英人氏、「良質なデータには鼓動がある」 カリスマファンドマネージャーのデータ分析論
データと投資の関係
――投資においてデータとはどのような存在でしょうか。
運用を車に例えるならば、データはエンジンです。シンプルに言うと、投資というアクションは何らかしらの定量・定性データによる判断です。つまり、データというエンジンが無いと投資は動きません。
――一般の投資家は、どのようなデータを分析すればいいのか、迷いそうです。
投資家が触れられるデータは二つあります。ひとつは株価の情報。もうひとつは会社の情報、業績です。前者が成果とすると後者は要素になるわけですが、業績データの中でも特に私が重要視するデータは営業利益です。と言うのも、株価と営業利益の相関係数は、半年ぐらいのトレンドで見ると1であり、営業利益が読めれば株価が予測できるからです。
この営業利益を説明する要因、特に敗因を発見することが主な分析になります。
――どのようなデータが、株価・業績(営業利益)を説明するのでしょうか。
データを選抜する際の基準は“血が通っているかどうか”です。良質なデータの中には鼓動があります。それはつまり、人間と連動しているということです。株価や業績、そして営業利益に関連しそうなデータの中で、とにかく人間の思考や行動に紐づいているものを選んでいきます。
たとえば、私は企業の業績を予測する際、ホームページに役員の写真が載っているかを見ます。何故なら、世間に顔を開示するということは“顧客に対して責任を取る”という経営陣の覚悟を表しているためです。事実、この仮説をデータ化して検証したことがありました。分析内容は極めてシンプルで、上場企業(時価総額上位200社)の企業ホームページを「1.社長と役員の写真が掲載」「2.社長のみ写真掲載」「3.写真掲載無し」と仲間分けし、株価のパフォーマンスとの関係を見ました。結果、1のパフォーマンスは業種に関係なく他を圧倒しており、2は次に良く、3は最低のパフォーマンス、ということが判明しました。