藤野英人氏、「良質なデータには鼓動がある」 カリスマファンドマネージャーのデータ分析論
――データ分析を投資で活用する際のポイントをご説明ください。
データ分析を投資運用で活用するためには、2つのポイントを押さえなくてはなりません。ひとつは“あきらめないこと”、もうひとつは“価値観の分散”です。
株価や業績を予測するためには、それらを説明する“血の通った”データを選抜しなくてはなりません。そして、それらを選抜するためには仮説立てをしなくてはならず、そのためにはデータを集める必要があります。逆に言えば、データが揃っていない段階では仮説立てが出来ず、株価を予測するための判断も出来ません。しかし、多くの人間は短期的に頑張って成果が出ないと諦めてしまいます。データ分析を実践で活用するためには、成功しても失敗しても一喜一憂せず、淡々とデータを溜め、分析し、改善していくことが重要です。
価値観をひとつに絞らない
次に大事なことは、価値観を分散させることです。株価や業績を予測するためには、仮説に基づいて人間と連動しているデータを選ばなくてはなりません。しかしその仮説が外れていた場合、同じ仮説に基づいて選び抜いた銘柄は総崩れしてしまいます。そもそも仮説は自らの主観によって組み立てられているわけですから、その危険性はゼロではありません。
また、予想外の出来事が起きてロジック自体が大きく変わってしまう可能性も考えられます。データ分析を実践的に活用するためには、そんな現実の不確実性を加味することも大切です。そのリスクヘッジの方法が、価値観を分散させることです。
具体的には、仮説と真逆の銘柄をポートフォリオに組み込みます。たとえば役員の写真が企業ホームページに載っていない企業など、自分の仮説には沿っていない企業にも投資をするわけです。余談ですが、日光東照宮の陽明門には逆柱と呼ばれる一本だけ文用が逆さになっている柱が存在します。これは、「建物は完成と同時に崩壊が始まる」という伝承を逆手にとった建築とされているのですが、徳川家康も、不完全なものを入れ込むことが完全としたのだと思います。
――データ分析でお金は稼げると思いますか。
稼げると思います。ですので、数値化出来るものは全部数値化してしまうべきです。そして、それが差別化となります。
――データを軸に見た、金融業界の未来について、どのように考えていますか。
改めて、投資運用の世界において、データはエンジンです。そういう意味で、既存の金融機関はさほど怖くないと考えています。そもそもマネジメント層のデータリテラシーが高くなく優秀な若手がいても扱いきることが出来ません。
私が脅威に感じている存在は、ネットベンチャー、そして、学術界と連携した企業です。データ分析力に長けた両者が金融業界に攻めてきた時、業界の未来は大きく変わることでしょう。
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