杜氏のいない「獺祭」、非常識経営の秘密

データ分析による集団体制で日本酒を造る

 データ分析は「儲かる」のかーー?
 これだけデータが注目される今日において、この問いに「No」と答えるわけにはいかない。しかし、必ずしも「Yes」と答えられるわけでもなく、「やり方次第でYesにもNoにもなる」としか答えようがないことがほとんどではないだろうか。
 では、データはどのように活用すれば「儲かる」、つまりはビジネスとして成果を生み出すのか?クラウド型の統計分析ツールxica adelieを提供する株式会社サイカが、さまざまなビジネスの現場でデータを活用するプロフェッショナルへのインタビューを通じて、その「可能性」や「限界」はどこにあるのかを探って行く。
 今回は、「杜氏がいない」「徹底したデータ管理」「年間を通じた酒造り」という体制で、銘酒「獺祭」を造っている山口県岩国市の旭酒造を率いる桜井博志社長にお話を伺う。

――酒造りの中で、データをどのように活用していますか。

酒造りは、伝統的に杜氏という職人文化によって支えられてきました。獺祭では杜氏がいない体制で酒造りをしており、優秀な杜氏がやっていたことを集団でやろうとしています。その中で、さまざまな形で酒造りの中でデータによる管理を行っています。

具体例を挙げると、洗米という米を水洗いする行程では、米の重量、洗う時間、水温などをすべて数値で計測し、米に吸収される水分量を0.2%以下の精度で調整できるようにしています。その日の気温によって少しずつ状況は変わりますので、数値を記録しながらその日に最適な条件にできるようにしています。

ほかにも、醗酵の期間中には、さまざまなデータ(アルコール度数、日本酒度、糖度など)を毎日計測し、それをすべて手書きでグラフにしています。毎日、その日に記録したデータから醗酵の進み方を分析して、次の日の温度管理などを判断しています。獺祭では年間に900本という非常に多い本数の仕込みを行っていますので、繰り返しやっている中で「理想的な数値」がわかってきました。

今のような造り方は1999年の冬の造りから始めて、最初の3年ぐらいでだいたいの形ができ上がりました。伝統的に杜氏がしてきた酒の分析やデータ解析を、社長である自分がやるようにしました。しかし、社長の自分がずっとやるわけにいかない。そこで、3年目にパートの女性をひとり入れて、データの解析をその女性にお願いしたときから、今の形ができあがりました。

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