(株式市場)”官製”の株式買い取り機構が大改革【2】

拡大
縮小

保有機構の機能が見直された結果、日銀の株式買い取りとの違いは小さくなった。残る大きな違いは、日銀の買い取り対象が銀行が保有するTier1以上の株式であるのに対し、保有機構はTier1を下回る部分の株式でも購入可能。また日銀の場合、買い取り対象企業が銀行だけなのに対して、保有機構は事業法人の保有する銀行株(持ち合い分)も買える。
 需給面での効果はどうか。江崎議員によれば、2003年3月末で、銀行が保有するTier1以上の株式は、約2兆8000億円。これに対して保有機構は約1兆8000億円、日銀は約1兆5000億円(総額で3兆円)の買い取り枠を残している。「両方足して約3兆3000億円、2兆8000億円に対して約5000億円の余裕がある。セーフティネットとしては出来上がったと考えている」(江崎議員)。
 もっとも、今年度の大手銀行の株式売却計画額は、合計で約3.7兆円に達する(みずほFG6000億円、東京三菱FG7500億円、UFJホールディングス8000億円、三井住友FG7000億円、りそなホールディングス3000億円、三井トラスト4000億円など)。 いわば、Tier1以上の保有株式の売却を、さらに上回る売却を考えている勘定になる。それでも5月以降株価は上がった。
 個人金融資産1200兆円を考えると、リスクを取れるマネーさえ株式市場に流れ込めば、銀行の持ち合い解消や厚生年金の代行返上に伴う売りを、十分吸収できることを示した。危機管理としての需給対策は認めるとしても、短期の需給対策に次に来るべきは、民間企業は株式の価値そのものを増す経営であり、政府は税制を始め株式投資の魅力を増すための政策である。
【原英次郎記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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