トヨタは下期赤字転落も、「円高直撃」の悲鳴と憤怒

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ついに一時、1ドル=83円台をつけた為替相場。産業界は憤りを隠さない。「(本社のある浜松から)東京に悲鳴が聞こえてほしい」(鈴木修・スズキ会長兼社長)、「日本から工場がなくなる危機感を国、日銀が持ってほしい」(中村健一・日本工作機械工業会会長)と、みな恨み節だ。円高に翻弄される各社を追った。

円高の直撃を受ける代表格がトヨタ自動車である。

同社の営業利益は米ドルに対し1円円高で300億円減る。目下国内ではエコカー補助金で好調だが、10月から剥落し、欧米景気の先行きも懸念される。2011年3月期下期の会社側の営業利益計画はわずか600億円。1ドル=90円前提のため、1ドル=85円で推移すれば、下期は営業赤字になる計算だ。

リーマンショック後の大減産で赤字に転落したトヨタは、1ドル=90円を前提に、損益分岐点を世界生産700万台まで引き下げることを目指してきた。計画では今期の販売台数は738万台(前期比2%増)。生産体制もグローバルに見直してきたが、そうした努力を追い抜くスピードでの円高にはお手上げだ。

第1四半期決算発表時、ホンダはさらに円高へと見直した。通期の前提は1ドル=90円、1ユーロ=120円だったが、下期のみ85円、110円で想定。ホンダにとって1円円高は、ドル・ユーロ併せて営業利益を185億円押し下げる。トヨタより少ないが、影響は決して小さくない。

仮に1ドル=85円が定着したり、80円への接近が現実のものとなったりすれば、企業はどう対応するのか。

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