同様の話を他でも聞くにつけ、シリコンバレーのベンチャーキャピタルの草創期にSBIC制度が貢献していたことがわかりました。このSBIC制度は、米国政府がベンチャー投資を増やすために1958年に創設した制度で、一定の要件を満たすベンチャーキャピタルに対して、政府が社債の買い取りという形で投資資金を供給するものです。当時の米国ではベンチャーキャピタルはまだまだマイナーな存在だったのですが、この制度や、ERISA法の改正(公的年金の運用改善)、キャピタルゲイン減税などの一連の施策でベンチャーキャピタル産業が育ち、今日の隆盛を謳歌するに至ったのです。
中小企業基盤整備機構のファンド事業
日本において、このSBIC制度と同様の役割を果たす制度が、中小企業基盤整備機構のファンド事業です。中小企業基盤整備機構は 中小企業・ベンチャー企業を支援する組織として、起業支援、経営相談、専門家派遣、販路開拓、海外展開支援など様々な事業を実施しています。その一環として1999年にファンド事業を創設し、ベンチャーファンドを応援しています。
このファンド事業は民間のベンチャーキャピタルが組成するファンドで一定の要件を満たすものに対して、そのファンドサイズの1/2を限度に中小機構が出資する制度です。例えば、民間VCと民間出資者がファンドに10億円を出資し、中小機構が同額を出資することで、20億円のファンドの組成が可能となり、民間より大きな資金規模でベンチャー投資が可能になります。民間の資金に公的資金をマッチするので、マッチングファンドと呼ばれています。ファンドからベンチャー企業への投資は、民間VCが独自の方針で主体的に実施する仕組みです。
中小機構ではこれまで90のファンド、ファンド総額1452億円に対して、580億円出資し、そのファンドから2327社のベンチャーに投資がなされています。そのうちでIPOが131社出るなどベンチャーの育成に貢献しています。
ユーグレナ、ジェイアイエヌ、モルフォ、シンバイオ製薬、ペプチドリーム、ナノキャリア、エニグモ、レアジョブ、フリークアウト等、現在のベンチャーの代表格の企業も中小機構出資ファンドの投資先です。
この制度は、大企業の子会社でない独立系のベンチャーキャピタルの支援による業界の育成の機能も持っています。日本では、もともと金融機関、証券会社、保険会社等大企業がベンチャーキャピタルを設立することが多く、独自に資金調達して投資を行う独立系のベンチャーキャピタルはファンド組成で苦労しています。また、民間単独では取り組みにくい地域企業に投資するファンドも応援しています。
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