2年連続Aクラス、広島カープ"強さ"の秘密 選手の獲得・育成に独自の哲学

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前田を指名する際のポイントになった「マジメさ」は、新人選手獲得に限った話ではない。広島の外国人が活躍する理由もそこにある。

現役時代にカープのエースとして最多勝、沢村賞、シーズンMVPにそれぞれ1度輝く活躍を見せ、現在は広島を拠点に解説者として活動する佐々岡真司がこんな話をしていた。

「カープに入ってくる外国人は基本的に性格がよく、マジメなタイプが多いですね。うちのピッチャーだったシュールストロムと西武から来たマクレーンがアメリカでスカウトをやっていますが、そういうところも見ていると思います」

性格を見るのは極めて大事

マジメさは特に、異なる環境に飛び込む際に欠かせないものだ。国が変われば、社会のルールが変わる。自分から適応しようとしなければ、いくら実力があっても宝の持ち腐れとなってしまう。

過去を振り返ると、高い実力を誇りながら、日本球界に適応できなかった外国人選手は少なくない。例えば、2010年途中に楽天に加入したルイーズは変化球中心の投球をされることについて、「なんで日本人は変化球ばかり投げるんだ」とグチをこぼしていたという。異なる環境に不平を言ってばかりでは、活躍できるはずがない。逆に言えば、外国人選手を獲得する立場にとって、性格を見るのは極めて大事なことだ。

セ・リーグでは中日に次いで少ない資金しか外国人に使っていない広島には、獲得する投手たちに共点がある(外国人選手の年俸総額は中日が3億6565万円でセ・リーグ最少、次いで少ないのが広島で4億8410万円)。総じて身長が高いのだ。クローザーのミコライオは205センチメートルで、来日してから4年連続で先発ローテーションを担っているバリントンは193センチメートル。今年7月に契約し、後半戦の起爆剤となっているヒースも193センチメートルだ。

高い身長から投げ下ろす利点のひとつが、相手打者に目線のズレを引き起こせることにある。日本人打者は、自分より身長が10センチメートルも20センチメートルも高い投手との対戦に慣れていない。カープにとって阪神の呉昇桓のように年俸3億円代の選手を獲ることは難しいが、日本では珍しいタイプの選手を連れてくることで、抜群の費用対効果を見せている。

資金に限りがあるのは、球団も会社も変わらない話だ。定められた予算のなかで成果を出すには、戦略性を持った人材獲得・育成が不可欠になる。自分たちの組織を前に進めてくれるのは、どんな人物なのか。あらゆる分野に長ける選手を獲るには高額な報酬が必要になるものの、ひとつの分野に特化すれば、リーズナブルな給料で契約できる。

そうした戦略を突き詰めることで、90年代前半から長き低迷期に陥った広島カープは復活の軌道に乗りかけている。果たして、年俸総額が最も少ないチームは今季、どこまで勝ち進むことができるか。仮に日本一になれば、30年ぶりの快挙となる。

=敬称略=

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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