広島は、新戦力のプラスがないばかりか、主力のFA宣言による流出にも悩まされてきた。彼らの行き先は豊富な資金を持つライバル球団で、2013年に10勝を挙げた右腕投手の大竹寛は同年オフ、巨人に新天地を求めている。
FAによる戦力格差に直面する広島にとって、チームづくりで極めて重要な意味を持つのが新人選手の獲得だ。
ドラフトは、各球団の色が鮮明に出るからおもしろい。たとえば、日本ハムが1位指名するのは「その年で最も良い選手」。2011年には巨人を希望していた菅野智之を指名し、入団に至らなかった結果として“機会損失”を被った。翌年はメジャーリーグ入団を表明していた大谷翔平の獲得に名乗りを上げ、説得の末に入団合意を取り付ける。2年後の現在、投げてはエース級の働き、打ってもふたケタ本塁打の活躍で、まるで“ふたりのドラフト1位”を獲ったかのような成果だ。
ドラフトは他球団との競合であるため、当日の朝に選択候補を変えたという話もよく耳にする。一方、広島の戦略は揺るぎない。ハイレベルとされる今季のセ・リーグの新人王争いで、カープからは投手の大瀬良大地、ショートの田中広輔と2選手が候補となっているが、そうした好選手を獲得できる背景には、自分目線のドラフト戦略を貫いていることが挙げられる。
オーナーが考案した独自の年表図
以前、週刊東洋経済の「スポーツ&リーダーシップ」でスカウト統括部長の苑田聡彦を取材した際、こんな話をしていた。
「うちは先代のオーナーの頃から、『力があるから獲ろう』ということは一切ない。チームの、どのポジションに新たな戦力が必要で、誰がいいのかと考えます。ファーストが欲しいとしたら、全国の大学、社会人、高校のファーストで、誰がいいのかを集中的に探していく。『ホームランを40本打っているから、この選手にしよう』という獲り方はしません。スカウトとしたら楽ですよ。そのポジションだけを追えばいいから」
広島には、自チームの戦力を一目瞭然で把握できる年表図がある。ポジション、利き手、年齢ごとに分類し、ひと目で足りない分野を見て取れるのだ。オーナーの松田元が考案したこの図を眺めると、「5年くらい先までは読める」と苑田は言う。
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