新人を獲得するまでの流れは、毎年1月、各スカウトが数百名の獲得候補を提出。キャンプ中にチームの戦力が分析され、オーナーや球団代表から弱点のあるポイントが各スカウトに伝えられる。そして3月頃、「予想通りにこの選手が伸びてないから、ドラフトではこのポジションを獲ろう」と絞られていくのだ。
昨年は3球団競合の大瀬良をドラフト1位で引き当てたが、過去を振り返ると、好選手を単独指名したケースも少なくない。2011年は新人王に輝いた野村祐輔、2009年は13年ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表に選出された今村猛、2008年は岩本貴裕が入団し、田中将大(現ヤンキース)や坂本勇人(巨人)がプロ入りした2006年高校生ドラフトでは前田健太を獲得している。徹底的に自チームを分析し、そこに欠けているピースを埋めるという独自基準があるから、他チームが手をつけない好素材が浮かび上がるのだろう。
どのように伸ばしていくのか
新人を獲った後、チームには欠かせない使命がある。人材を伸ばしていくことだ。どういったポイントを見れば、プロ入り後に伸びる選手を見つけられるのだろうか。
苑田が説明する。「性格を見ますね。練習の態度で、やる気があるか、ないか。やる気がない人、人のせいにするヤツはダメです。ピッチャーがベースカバーに入らなかったとき、『お前が悪い』という野手はダメ。ひとつのボールを追いかけて、みんなでカバーするのが野球です。人の気持ちのわかるヤツがずっと伸びていく」。
広島の基準で見たとき、抜群の評価を受けたのが野村だった。普段の練習態度はもちろん、野村は卓越した頭脳を持っていた。明治大学4年時の秋季リーグで、慶応大学の伊藤隼太(現阪神)を封じ込めた投球術に苑田は感銘を受けた。
「野村は相手打者の長所と短所を自分の頭に入れています。内角が苦手の伊藤に対し、内側で攻めて、外で遊んでというピッチングでバラバラにしました。頭の良さ、コントロール、球のキレ、総合的な判断。野村は野球をするために生まれてきた男です」
2006年には田中将大に目をくれず、前田健太を獲得した。その理由も、高校生だった前田に伸びしろを見たからだ。
「身体はそんなに大きくなかったけど、すごく自分で考えて練習していました。身体にバネもあってね。球速は140kmちょっとしか出ていなかったけど、『これは絶対に良くなる』と担当スカウトとふたりでオーナーに話したら、『わかった』と言ってくれました」
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