「社員を使い捨てにする会社」の見分け方 内定をすぐ出す初任給の高い会社は要注意

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そもそも30万円など支払う気がないのに、学生を引き付けるために虚偽の金額を募集要項に掲載していることもありえるため、もし過去にも採用実績のある会社であれば、インターネットの掲示板などで、評判をみておくべきでしょう。

初任給とは何の実績もない新人社員が受け取る最初の給料のことを指します。会社に何の貢献もしていない人間に高い給料を払うというのは、合理的に考えればありえません。外資系などで初任給が高いことはありえますが、語学力、学歴など、入社の必要条件がかなり高いはずです。

3年後離職率が3割超の企業に注意しよう

Q3:どのようなデータから、問題のある企業を判別できますか。

学生間のウワサやネットへの書き込みだけで、問題のある企業かどうかを判断することはおすすめできません。新設会社でない場合には、過去の実績データをみることが重要です。

まずは、『就職四季報』に掲載されている「3年後離職率」をチェックしてください。3年前に入社した新卒者が3年間でどの程度辞めたのかを表します。厚生労働省の「職業安定業務統計」によれば大卒で就職した人の3割が3年以内に退職しているので平均値は3割程度と考えられます。そのため3割を大きく超えるような企業には注意してください。

そのほかに【離職率と離職者数】も見てください。【離職率】とは、1年間に会社全体でどのくらいの社員が退職しているかを示します。リストラなどの特殊要因がない場合は、5%を超えると高い水準です。

さらに【男女別従業員数、平均年齢、平均勤続年数】の中の平均勤続年数も確認してください。多少給料が安くても居心地がよければ社員はなかなか辞めません。「平均勤続年数」が長ければ、働きやすい会社であると判断できます。

この欄を見るときには、全体の平均年齢だけでなく、男女別もチェックして下さい。男性の「平均勤続年数」が長くても、女性が短ければ女性にとって働きにくい職場環境なのかもしれません。

【月平均残業時間と支給額】で残業時間を見ておくことも重要です。1カ月に30時間としても毎日、1時間超の残業時間となります。30時間を超えている企業は残業が多いと言えます。

有休消化年平均」とは実際に取った有給休暇の日数です。会社の規則で付与された有給休暇の日数ではありません。会社のHPやパンフレットに有給休暇日数が書いてありますが、その日数分休むことができる会社は少ないです。日本企業の平均は約10日。これが極端に少ない会社は、社員をこき使う会社かもしれません。

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(撮影:風間仁一郎)

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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