水に苦しむインド農業の課題 技術導入による生産性向上を企図

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インド政府は、先進諸国と100カ国以上の国々が期待していた貿易円滑化協定(TFA)に調印しない姿勢を明確にしている。インドの食糧安全保障目的の備蓄についての永続的な解決方法が見つからないかぎり、開放政策は危険と判断しているためだ。

現在のWTOの規定では、食料補助金の上限を穀物生産の総額の10%と定めているが、算定基準となる価格は20年以上も前のもの。インドは基準年をインフレや為替変動などさまざまな要素を考慮して、1986~1988年ではなく、基準を現在に近くするなど、算定方法の改訂を要求していく方針だ。

食品加工とは、農業・園芸産品に付加価値を与えること。だが、それには選別、等級付け、包装といった、貯蔵寿命を延ばすための過程も含まれる。食品加工産業は工業と農業を連携させ、シナジーを生む。インドの食品加工産業は農業経済を大きく盛り上げ、大規模な食品加工設備やフードチェーンを生み出し、その結果として雇用を創出するという大きな可能性を秘めており、その意味で世界から成長産業と考えられる。

多くの多国籍企業が進出

インドの食品市場は、都市部の若者層が包装された加工食品を好む傾向があることから、1820億ドル規模と推定されている。

加工食品部門にはすでに多くの多国籍企業が進出しており、農家と直接契約したり、さらには農業ソリューションといったB2B市場への進出を模索している企業も多数ある。JICAはインドの農業部門で多くのプロジェクトを実施しており、日本企業の中にも食品加工部門で利益を出しているところもある。

将来、インドは世界の食料供給基地となることも考えられる。本来、インドの耕作地は年間を通じてさまざまな野菜や果物を収穫できる気候に恵まれているためだ。日本企業にとっても大きなビジネスチャンスといえるだろう。

帝羽 ニルマラ 純子 インドビジネスアドバイザー

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ていわ にるまら じゅんこ

インド共和国・バンガロール生まれ。法政大学大学院修了。来日以来14年間で、日印コンサルタント会社起業を経て、現在インドビジネスアドバイザーとグローバル人材トレーナーとして活躍。著書には、2013年にインドの諺について日本語で解説した『勇気をくれる、インドのことわざ』がある。インドの諺を日本語で紹介する本の発行は、長い日印の歴史でもこれが初。2014年には『日本人が理解できない混沌(カオス)の国 インド1―玉ねぎの価格で政権安定度がわかる!』 『日本人が理解できない混沌の国インド2―政権交代で9億人の巨大中間層が生まれる』発行。

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