「蛭子さんマネジメント」のスリルと達成感 "働かないオジサン"のバス旅番組が面白い!

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太川リーダーが立派なのは、働かないオジサンを絶対に見捨てないこと。こんなオジサン、どこかに置いていきたいと思っても不思議ではない中で、太川さんは、何とかしなくてはと考えたのでしょう。蛭子さんに宿泊先選びという役目を与えました。「旅館が嫌だというなら、あなたが探して」と。すると蛭子さんはそこだけはかいがいしく電話をして、予約をしたりするようになりました。しっかりと宿に送迎や食事を頼むのも忘れません。

なるほど。働かないオジサンも好きなことだけはやるのだ、と思う瞬間です。結果的に地方なので旅館になることが多いのですが、自分で選んだのだから文句も言えません。

太川リーダーを見て、達観の境地を知る

さて、この番組で蛭子さんはまったくといって働きませんが、番組にとっては重要な役割を果たしています。それは太川さんを引き立てる役目。蛭子さんがいるから、働き者の太川さんが抜群に引き立つ。ルートを決めて、乗り継ぐバスを決めて、どこで歩くかというポイントも決めて……とにかくこの番組は重要な決断の連続なのが、それを一手に担っているのが太川さんです。

太川さんは自分独りで決めてもいいのに、必ず、蛭子さんと女性ゲストに、「こっちのルートで行ってもいいですか?」と聞く。蛭子さんが「バス旅だもんね。歩くことなんて禁止にしてもいいぐらいだよ」と歩くのを嫌がっても、何とか歩かせる。この人が「上司にしたいタレントナンバーワン」に選ばれる日も近いのではないかと思うほど、立派なリーダーぶりです。

しかし、太川リーダーが輝けるのも、ダメダメな「働かないオジサン」がいるからこそ。

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」の大ヒットで、その後、似たような番組がたくさん放送されていますが、働くオジサンと働かないオジサンの完璧な対比が見られるのは、この番組のみ。太川さんと働くオジサンの組み合わせだったら、超つまらない番組となっていたことでしょう。

そう考えると、わが社の「働かないオジサン」も必要悪かも……と思う人はいるのでは? 「あのオジサンがいるから、オレが引き立つんだよね」と。会社で働かないオジサンにむかついたら、「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を見るのがいいかもしれません。太川リーダーのように達観した境地にたどり着けるのは間違いありません。

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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