オリオンビール、「酒税軽減廃止」で問われる覚悟 20%減免の5年維持という要望は通らなかった

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税調の結論が出る12月10日直前まで嘉手苅会長は奔走した。しかし、要望は通らなかった。泡盛業界と同様、ビールの軽減率も段階的縮小の後に廃止されることに決まったのだ。

結果を受け、オリオン広報は「今般、与党税制調査会の令和4年度税制改正大綱において、同制度を4年5カ月延長していただきました。あらためて同制度の維持にご尽力いただきました関係者に対し、心より感謝を申し上げます」と前向きなメッセージを発した。が、嘉手苅会長を筆頭に、オリオン経営陣の落胆は大きい。

軽減率維持の最大のネック

「嘉手苅会長の意見は最後まで拝聴した。投資計画のこともうかがった。茂木幹事長のもとへ行く時は私が同席した。オリオンをいじめる意図はまったくない。ただ、さまざまな意見を総合して検討した結果、今回のような結論になった」

泡盛業界やオリオンビールからヒアリングしてきた自民党沖縄振興調査会事務局長の宮崎政久衆議院議員は、東洋経済の取材にそう語る。

「最大のネックは、オリオンの軽減率20%を5年間維持するとなると、泡盛の軽減率よりもオリオンの軽減率のほうが大きい“逆転現象”が起きてしまうことだった」と宮崎議員は明かす。

泡盛業界大手グループの軽減率は2025年末に15%に引き下がる。その時、オリオンの軽減率が20%のままであれば、泡盛酒蔵所と比して総資産や資本体力で勝るオリオンの軽減率のほうが大きくなってしまう。「その事態を避けようと、オリオンの軽減率も段階的に下げざるをえなかった」(宮崎議員)のだという。

だが、この結論に異議を唱える人物がいる。「今の自民党税調には、オリオンを沖縄経済のスケールアップのために使いこなそうとする意思、能力がない」と言って憚らないのが、下地幹郎前衆議院議員(日本維新の会)だ。山中氏の薫陶を受けた下地氏は、オリオンが酒税軽減措置の延長を政府・自民党に求める際のパイプ役を担ってきた。

「5年間、軽減率を単純延長したところで軽減総額は50億~60億円程度。オリオンの投資計画、事業計画が軌道に乗れば経済波及効果は50億円どころではない。今の自民党には、先を読む力がない」と下地氏は気を吐く。

基地問題や経済政策で菅義偉前首相が官房長官時代から頼りにした沖縄の議員は、下地氏だった。一度は自民党を離れたものの復党の意思を垣間見せる下地氏に対し、自民党沖縄県連は警戒心を隠さない。「菅-下地」ラインは、時に「菅-自民党沖縄県連」ラインよりも存在感を放ったからだ。

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