オリオンビール、「酒税軽減廃止」で問われる覚悟 20%減免の5年維持という要望は通らなかった
会長みずから自民党幹部を説得に回るも、結局、要望は通らなかった――。沖縄県のビールメーカー・オリオンビールのことだ。
政府・与党の税制調査会は2021年12月上旬、沖縄県産の酒類にかかる税の軽減を段階的に縮小し、最終的に廃止することを2022年度税制改正大綱で決めた。税の減免措置を受けていた沖縄の泡盛業界とオリオンビールは半世紀も続く補助策から「卒業」することになる。
沖縄の酒税軽減策がスタートしたのは日本に復帰した1972年。主導したのは、後に「自民党税制調査会のドン」と呼ばれることになる山中貞則・初代沖縄開発庁長官。沖縄の産業基盤の弱さや消費者の所得を考慮し、5年間の時限措置として導入したものだった。しかし、特別措置は税制改正のたびに延長され、50年が経過した。
泡盛業界は自ら段階的縮小を提案
今回の税制改正論議の様子がいつもと違ったのは、泡盛業界が「単純延長」ではなく、「段階的に縮小し2032年5月を期限に廃止」という案を自ら内閣府に示したことによる。
泡盛(180ミリリットル)にかかる税は本土企業のそれが54円であるのに対し沖縄は19円安い35円、35%が減免されている。泡盛業界は年間出荷量に応じて業界を3グループにわけ、大きいグループについては段階的に軽減率を縮小し、10年後に全体で廃止する方向で決まった。
泡盛業界と内閣府が着地点に向けて順調に協議を進めたのに対し、最後まで抵抗したのがオリオンビールだった。ビール(350ミリリットル)にかかる税は、本土ビール企業の70円に比べ、オリオンビールは14円安い56円、20%が減免されている。
内閣府は2023年の半ばに15%へ下げ、全国でビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)の税率が統一される2026年10月をもってオリオンビール税率も本土にそろえる(軽減率を0%にする)案を示していた。
ところがオリオンの嘉手苅義男会長は、内閣府の官僚が練り上げた案に最後まで首を縦に振らなかった。段階的縮小ではなく、20%減免の「5年間維持」を求めたのだ。
与党の税制論議が本格化した11月下旬、自民党本部には嘉手苅会長の姿があった。茂木敏充幹事長や宮沢洋一税制調査会長、他「インナー」と呼ばれる税調幹部らのもとを訪れ、オリオンの投資計画や要望を説明して回っていたのだ。
ビール工場の刷新や製缶工場設備など140億円規模の投資計画で雇用を生むこと。テーマパーク計画事業体に5億円出資して観光産業を支援すること。貧困家庭・シングルマザーの就業支援をすること。原材料に県産大麦を用いて農業支援することなど、オリオンが沖縄経済に貢献することを説いたうえで、税制の「配慮」を求めた。
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