「同情はしないが、今回に関しては運が悪かったというしかない」。哀れみともとれる目をライバルから向けられているのが、ビール大手の一角、アサヒビールだ。
6月10日、ビール大手4社が5月の販売動向を発表した。新型コロナウイルスによる外出自粛を背景に、自宅で気軽に飲める価格の新ジャンルやチューハイが人気となった反面、飲食店の営業時間短縮や休業でビールの需要は落ち込んだ。それらがどう数字に反映されるのかが注目されていた。
大手4社におけるビール、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)を合わせた「ビール類」の販売数量は、前年同月比13%減となった。4月の同21%減からやや持ち直したとはいえ、依然厳しい状態が続いている。
前年同月比でプラスになっている発泡酒や新ジャンルとは対照的に苦しいのがビールだ。各社における5月のビール販売数量は、サントリービールが55%減(4月は62%減)、キリンビールは41%減(同49%減)、サッポロビールで39%減(同44%減)。主要ブランドごとに販売数量を公表しているアサヒビールではスーパードライが35%減(同52%減)だった。
業務用ビールの多さがあだに
一見するとアサヒビールの影響は他社より小さく見える。だが、競合相手が哀れみの目を向けるのには理由がある。着目すべきは、ビール類に占めるビールの比率と、ビールにおける「業務用ビール」の構成比だ。
アサヒビールの2019年販売数量の実績を見ると、ビール類のうちスーパードライなどのビールが62%を占める。発泡酒の「スタイルフリー」や新ジャンルの「クリアアサヒ」などは残りの38%。金額ベースでもビールが72%と、大きな収益柱になっている。
さらにビールの販売数量の内訳に目を移すと、業務用が大半を占める瓶・樽商品の割合は48%(2019年実績)。その販売数量は4月が前年比80%減、5月が同60~70%減と落ち込み、販売数量全体にも影響を及ぼした。
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