一方、キリンビールの販売数量の構成比はビール33%、発泡酒23%、新ジャンル44%と大きな偏りはない。ビールのうち業務用が占める割合はアサヒビールと同様に約半数だが、全体の構成比を踏まえると業務用ビールの需要減の影響は限定的といえる。サントリービールは、ビール類のうち68%を「金麦」などの新ジャンルが占める一方で、「プレミアムモルツ」などのビールは残りの32%となる。
アサヒビールは、キリンビールやサントリービールよりビール依存度が大きいうえに業務用ビール比率も高い。つまりコロナ禍によるマイナス影響を受けやすい状況にある。
なお、サッポロビールは、ビール類のうち「黒ラベル」「ヱビス」などビールの構成比が69%とアサヒビールより高い。業務用ビールの割合もアサヒビールと同程度とみられるが、スーパードライの家庭用の缶商品で販売数量が今年1~5月で前年同期比7%減と苦戦しているアサヒビールと違って、黒ラベルの家庭用缶商品の1~5月販売実績は3%増と前年同期を上回っている。
勝負の年だった2020年
2020年1月に行われたアサヒビールの事業方針説明会で、同社の塩澤賢一社長は「今年はビールに注力する」と宣言。この方針の下、スーパードライブランドの再強化に向けて、特に若者や女性に対する訴求を強めていた。
7月に開幕する予定だった東京五輪では、ゴールドパートナー企業として需要を喚起し、ビールの税率が下がり需要が高まるとにらんだ10月の酒税改正を迎える目算だった。だが、その計画は新型コロナで潰(つい)えてしまった。
飲食店で減少したビールの需要は、家庭用ビールではなくビールより安い商品に移行しているようだ。目下、家庭用の新ジャンルやチューハイなど安い缶商品の販売促進で、各社はしのぎを削っている。新ジャンル商品の5月の販売数量は、キリンビールが前年同月比10%増、サントリービールは同18%増、サッポロビールは同28%増となった。
一方、アサヒビールの新ジャンル、クリアアサヒの缶商品は5月の販売数量が前年並みと横ばい。そのため3月発売の新ブランド「アサヒ ザ・リッチ」で低価格志向の需要取り込みを急ぐ。販売数量はクリアアサヒの4割ほどだが、初年度販売目標である800万箱の3割を発売2カ月半で達成している。
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