沖縄・オリオンビール「第2創業」に至った舞台裏 県民が育てるビール会社はなぜ売られたのか
「沖縄の皆様の中には『オリオンビールが沖縄のビールではなくなる』という懸念があるようだが、オリオンのDNAは変わらない」
7月22日、オリオンビールの社長兼最高経営責任者(CEO)就任が決まった早瀬京鋳(けいじゅ)氏は会見でこう述べた。今年1月、野村ホールディングスとアメリカの投資ファンド、カーライル・グループに買収されることが発表され、県民には「外資にのっとられてしまうのか」という不安の声が広がっていた。
「ワッター自慢の」オリオンが買収される
オリオンビールの2018年3月期の売上高は283億円、経常利益37億円。ビール業界では大手4社(キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ)に次ぐ国内5位ではあるものの、売上数量の実に約8割を沖縄県内が占める。沖縄の歌手グループBEGINが「ワッター(私たち)自慢のオリオンビール」と歌うほどに、地元にとっては1つのアイデンティティとなっている。
カナダのスポーツ用品大手「ルルレモン・アスレティカ」の日本法人社長を務めていた早瀬氏に社長就任の打診があったのは、今年の春先だった。以前から地域貢献につながる仕事がしたいと公言していた早瀬氏は、当時の心境を「チャレンジするしかないと思った」と振り返る。
早瀬氏が「オリオンのDNAは変わらない」と強調したのは、ひとえに「県民感情」への配慮だ。創業者の具志堅宗精(故人)は「沖縄財界四天王」の1人に数えられる沖縄が誇る偉人。1959年、「オリオンビール」という商品名を公募によって決めたのも、「県民が育てるビール会社」になることを宗精が重視したからだ。それだけにオリオン株の売却には、県民の反発が大きかった。
新社長就任が発表される約2週間前の7月5日、オリオンビール創業の地である名護市で開かれた「具志堅宗精を語る会」では、株売却に怒りの声が飛び交った。
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