瀕死だった「地ビール」にキリンが夢中なワケ ウイスキーに続き「オジサンの酒」復権なるか

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なぜ今、キリンはクラフトビールに力を入れるのか?(撮影:今井康一)

若者の酒離れが言われるなか、キリンビールが仕掛けるクラフトビールが、にわかに注目を集めている。2015年にクラフトビールを供するレストランを2店舗開設して事業を始め、今年末までに4店舗に拡大。同事業は、2020年に黒字化も達成する見通しだ。

クラフトビールとは、かつての「地ビール」のこと。小さな醸造設備で多様につくられる手づくり感にあふれたビールを指す。大規模工場で造られる一般的なビール類とは対照的に、手間暇がかかるぶん、値段はやや高い。ビールの中でも高価格帯に属する「ヱビス」や「ザ・プレミアム・モルツ」より値が張る。

日本の大手4社のビール類のほとんどは、澄んだ淡色でホップの苦味を利かせたピルスナータイプ。発酵を終えた酵母が下層に沈む下面発酵により醸造される「ラガー」が大半だ。麦芽100%、ドライ、あるいは糖質オフどれも同じだ。

これに対しクラフトビールは、上面発酵で醸造される「エール」が多い。上面発酵は、発酵時間が短く、醸造に冷蔵設備を必要としない。香りが華やかで、炭酸は強い。エールの一種のアルト、小麦を使うヴァイツェン、ローストした大麦のスタウト、ペールエールにインディアペールエール、さらにはピルスナーなど多岐にわたる。

地ビールブーム崩壊から、復興へ

日本の地ビール市場は、1994年の地ビール解禁で誕生した。最低製造数量が緩和され、日本酒の酒蔵や第三セクターなどが一斉に参入。一時は300社近くが林立した。ところが淘汰が繰りかえされ、ブームは去った。それでも、約200社が細々と残る。

その息も絶え絶えのクラフトビールに、大手4社の中で目をつけたのがキリンだった。社内に非公式なプロジェクトが生まれたのは、2011年。ビール類市場は1994年をピークに落ち続けていて、大きな原因として”若者のビール離れ”が2011年当時から指摘されていた。

「オジサンの酒であるビールを、何とか若者に飲んでもらえないか」

無理筋というわけでもない。嗜好品である酒類のブームは頻繁に変わる。オジサンが飲む酒として、四半世紀も市場が落ち続けていたウイスキーは、サントリーがハイボールを提案したのをきっかけに、2009年から急伸している。

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