常識外れの「よなよなエール」が独走するワケ クラフトビールの旗手が挑む販売と生産の壁
クイズ大会、チアダンスに音楽ライブ、ビールグラスを片手に盛り上がる約4000人の参加者――。10月7日、クラフトビールメーカー最大手のヤッホーブルーイング(長野県・軽井沢町)のファンイベント「超宴」(ちょううたげ)が神宮外苑軟式球場で開催された。
超宴は、ヤッホーが毎年開催しているファンイベント。4200円の入場チケットを買うと、ビール3杯、500円分の食事券、特注グラスと引き替えられる。加えて地元・軽井沢エリア限定品など10種類以上のクラフトビールが提供されている。
ブーム到来でも、155社中55社が赤字
クラフトビールとは、小規模な醸造所が作るビールのこと。酒税法上の定義はないが、大手のビールに比べ、味や香りなどで個性を出しやすいことが特長だ。
ビール全体の課税出荷数量は1994年度をピークに、2015年度は6割減の273万キロリットルにまで減少。一方で、クラフトビールの市場規模は推計で1%にも満たないが数十社が新規参入し、2015年度に2.3万キロリットルと、拡大が続く。
だが、クラフトビールメーカーの多くは、経営がうまくいっているとはいいがたい状況だ。国税庁が2016年12月に発表した「地ビール等製造業の概況」(2015年度)によれば、調査した155業者(大手5社を除く)のうち、20社の営業利益は50万円未満で、55社は営業赤字に陥っている。
むしろこのブームを牽引しているのは、かつての地ビールメーカーと呼ばれた会社だ。
業界最大手が1996年創業のヤッホー。売上高は非公表だが、信用調査会社によれば2015年11月期に30億円程度だったようだ。12年連続で増収増益を続け、「年間平均30%の勢いで成長していて、クラフトビールメーカーの中では圧倒的」(ヤッホーの井手直行社長)という。
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