瀕死だった「地ビール」にキリンが夢中なワケ ウイスキーに続き「オジサンの酒」復権なるか

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代官山店には醸造設備も備える(撮影:今井康一)

またアメリカ市場でも“実績”がある。バドワイザーやコロナといったビッグブランドに代わり、西海岸を中心にクラフトビールは若者から支持を受けて台頭している。

「つくり手の顔が見えて、個性にあふれるクラフトビールは若者に受けている。特にサードウエーブコーヒー発祥のポートランド(オレゴン州)では、バド(ワイザー)を置いていないスーパーさえある。この流れはきっと日本にも来るのでは」(キリン幹部)。複数回、アメリカ市場を調査し、こんな仮説を立てたという。

2015年春、キリンは渋谷区代官山と横浜工場内にクラフトビールが飲める店を相次ぎ出店。代官山店には醸造設備を設け、醸造したばかりのクラフトビールを提供する。2017年には醸造設備併設の京都店を、2018年夏には店舗だけの銀座店を開設した。

この10月に、キリンのクラフトビール専門子会社であるスプリングバレーブルワリー(SVB)2代目社長に就任した島村宏子氏は話す。

「4店舗合算の累計入場者数は、2018年中に100万人を突破する見通しで、当初の想定より早い。各地でブルワリー(醸造業者)の参入が相次ぎ、盛り上がってきている」

キリンが参入した2015年の段階で、クラフトビールの醸造業者は、ブーム崩壊を生き残った200社だった。それが近年、外食業界での牛肉ブームとともにクラフトビールに脚光が集まり、再び参入者が相次ぐ。この結果、現在は314社に増えたとも言われる。3年間で1.5倍の伸びである。

日本のクラフトビールの生産量は、今年約360万箱(1箱は大瓶20本=12.66リットル)となり、沖縄のオリオンビールの総出荷量とほぼ同じ規模になる見通しだ。

日本のクラフトビールが秘める可能性

スプリングバレーブルワリー(SVB)2代目社長の島村宏子氏(撮影:今井康一)

ただし、順調に市場は伸びてはいるものの、規模はビール類市場全体から見れば、1%未満しかない。

これに対し、総市場が日本のほぼ4倍あるアメリカ市場では、クラフトビールは生産量で約12%を占める。さらに、販売金額のシェアでは約20%に上る(日本とアメリカの数値は、いずれもキリンの推計)。

島村氏は「日本ではクラフトビールの飲用率はまだ低い。その分、可能性は高いと思う。特に20代のファンは着実に増えている」と話す。今後を「第2ステージ」と位置づけ、①新たな製品やビアフェスの提案の加速、②ホップや大麦など原材料からの地産地消の推進や、国産ホップのブランド化、③複数のクラフトビールを提供できる簡易な専用サーバの導入店拡大、を重点的に進めるという。

そもそもキリンのクラフトビールが若者に支持されている理由は何か。ひとつはファッション性であり、もうひとつは提供するクラフトビールの中身だろう。SVB東京(代官山店)は朝8時から飲めるが、日中でもオシャレな女性客が目立つ。また、銀座店では、透明なプラスティックカップに広口ぶたの専用容器を今夏から採用されている。あのコーヒーチェーンのようなスタイリッシュさだ。

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