オリオンビールが「ストロング系」をやめた理由 9%チューハイ発売から7カ月で下した決断

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アルコール度数9%のストロング系の販売中止を決断したオリオンビールの早瀬京鋳社長(写真:オリオンビール)
自社初となるチューハイ商品を出してからわずか7カ月で商品戦略を大きく転換した企業がある。沖縄のビールメーカーであるオリオンビールだ。
同社は2019年末、自社ブランド「WATTA(ワッタ)」の商品群からアルコール度数9%のストロング系を外した。ストロング系の生産停止を決断したのは、2019年7月から経営トップを率いる早瀬京鋳社長だ。
生産をやめた理由は何だったのか、オンライン形式のインタビューで真意を尋ねた。

高アルと健康志向の商品を作る矛盾

――ストロング系の生産をやめた背景には何があったのですか。

2019年の11月頃、あるNPO団体が主催した会合でのやりとりが転機となった。社員と参加したその会合は社会問題を幅広く研究する場だった。私たちが自己紹介をすると、「今日はオリオンビールの方がいて、ちょっと言いにくいんですけど」と、参加者の1人が切り出した。

薬物やアルコールの依存症問題に関わるNPO団体の方で、次のような話をしてくれた。

「コンビニで買った高アルコール(高アル)チューハイを1~2本飲み、酔っ払って倒れるように寝る。そのような習慣を持つアルコール依存症の人はすごく多い」

ちょうどこの頃、社内ではアルコール度数の低い健康志向商品を作る企画を進めていた。われわれはアルコール依存症の温床とも指摘されている商品と同時に、健康志向のアルコール商品も作ろうとしている。そこに何か矛盾を感じた。

営業マーケティング部門や製品部門、幹部が全員集まる大きな会議がある。その場で私は「高アルをやめる?」と述べ問題提起した。

――突然の発言に反対の声が上がったのでは。

当然、その場はざわついた。「チューハイの売り上げの4割を占める商品ですよ」と。「でも4%がいちばん売れているんだよね」と返した。

実際、「ワッタ」の売り上げの4割はアルコール度数9%のストロング系だったが、度数4%の商品のほうが売れていた。つまり当社のチューハイで消費者が支持していたのは、アルコール度数ではないということ。シークヮーサーなど沖縄の県産品とコラボしていることなどを評価してくれていた。

コンビニやスーパーでぜひ確かめてほしい。お酒の売り場がどれだけ度数9%の商品で埋められているかを。

商品訴求の優先順位において、アルコール度数の位置づけを下げる会社が1社ぐらいあってもいい。しかも健康志向の商品を作っているのだから、高アルはもうやめようとなって、2019年12月に9%商品の生産を停止した。

東洋経済プラスの短期連載「ストロング系チューハイの是非」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。この記事と合わせて5本の記事を配信しています。

①データで見る!「ストロング系チューハイ」いちばん飲む世代は?
②「ストロング系悪玉論」にメーカーはどう答える?
【インタビュー】
③精神科医・松本俊彦氏「精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ」
④小説家・金原ひとみさん「『ストロング』は人を魅惑する罪深き飲み物」
⑤オリオンビール社長・早瀬京鋳氏「度数9%の商品を売ることに罪悪感を抱いた」
兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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