急成長を遂げた缶チューハイ市場。ビール類より安い価格や飲みやすさが受けて、幅広い層の人気を集めている。しかし、光が強ければ影も生まれる。アルコール度数9%の「ストロング系」を中心に関係者の問題意識を探った。
「ストロング系を(ネット通販の)アマゾンで箱買いして、1日で半分、12本くらい飲んじゃったり。45Lのゴミ袋は1週間で一杯になる。缶がぎっしり詰まった袋は見苦しいので、人目につかない時間を選び、こっそりゴミ置き場に捨てていた」
50代というその女性が語る身の上話は、物静かな雰囲気とのギャップに驚かされる内容だった。
DV(ドメスティックバイオレンス)が原因で別れた元夫はアルコール依存症だった。「自分はお酒に強いので一度も酔ったことがなかった。アルコール依存の夫を『怠け者だ』とすごく軽蔑していた」。
そんな彼女の酒の飲み方が変化したきっかけは、仕事の多忙さに加え、息子が友人関係でトラブルに巻き込まれたことだった。ストレスから逃れようと、酒量が増え始めた。
依存症の人々が語る危うい魅力
「家で一人になると、たちまち悩み事で頭がいっぱいになる。思考を鈍らせたい、嫌なことを薄めたい。でも酒に強いから、すぐに酔えない」
「ビールはお腹いっぱいになる。焼酎やウイスキーは苦手だし、自分で割るのも面倒。そんなときに安くて甘く、コンビニで買ってすぐに飲めるストロング系はちょうどよかった。酔って何もわからなくなって寝られるように飲んだ」
その後、鬱病の治療でかかった病院で、自身がアルコール依存症であると知った。現在は断酒して5年以上が経つ。
アルコール依存症の治療の基本は断酒となる。そのため「断酒会」と呼ばれる自助グループなどで、自らの酒に関する体験を他人と共有することが心の支えになる。断酒会に参加していた高齢男性に話を聞くと、10年近く断酒し続けている余裕からか軽口をたたいてみせた。
「ストロング系のある社会で暮らすアルコール依存症の患者は気の毒だ。ストロング系は『破滅する』速度を速めているのだから」
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら