石に人生を捧げる「石マニア」の知られざる頭の中 "好き"を仕事にした「地質技術者」の人生

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──ブラタモリでよく見る「ここは扇状地で……」みたいな話よりも、もっとハードそうですね。調査する場所に道はあるのでしょうか?

道はありません。時には水の流れている沢をはいつくばりながら、地図だけはぬらさないようにして、ハンマーとクリノメーターという地層を測る機械を持って、山の中を駆け上がっていくようなイメージです。こうして作る石の地図は地質技術者のベースたるところで、これがないと次のステップに進めません。

──地質技術者は、多くの人が存在すら知らない職業のように思えます。どうやって今の仕事に巡り会ったのでしょうか。長谷川さんの専攻は?

私は新潟大学理学部地質科学科の出身です。大学の頃は、そのまま博士をとって、大学に残ることも考えていましたが、熊本県の山中を踏査している際に、弊社の取締役と縁ができて入社しました。地質技術者の特殊なところで、企業でも研究ができます。学会発表もします。ですので、純粋研究をしている方のほうが少ないかもしれません。

長谷川さんが大学時代に地質図作成用に作ったルートマップ

 お気に入りの石は「オパール」「縞状鉄鉱層」

── 長谷川さんは小学生のときから石が好きで持ち帰る癖もあるということで、引っ越し業者がうんざりしたほどコレクションがあるそうですね。その中から、お気に入りの石ベスト3を教えてください。

3位は福島県で採れたオパールです。今は入山禁止になって採れなくなってしまいましたが、日本でも虹色に光るオパールが採掘できます。昔、天皇家に献上していた唯一のオパール鉱山ということでかなり有名な場所です。

第3位は、オパール@福島県耶麻郡西会津町宝坂(屋敷鉱山産)

干渉色といって、光の入る角度によって虹色に見えたり見えなかったりします。水が抜けると真っ白になってしまい虹色の光沢が消えてしまうので、この標本だけは水に入れた状態で保管しています。

──希少性が高くて美しいものにコレクターが惹きつけられるのはよくわかります。では、2位はどんな石ですか?

オーストラリアで取ってきた縞状鉄鉱層です。縞模様の中に銀色の帯があります。これが太古代(およそ40億年前から25億年前までの期間)のものです。酸素がまだ少なかった頃、海にはたくさん鉄が溶けていましたが、酸素を作る生物が出てくると、鉄はさびて海底に沈殿しました。徐々に水が抜けて岩石になり、鉄の鉱物が濃縮した地層ができました。

第2位は、25 億年前の縞状鉄鉱層(Mount Tom Price mine,西オーストラリア)

これが縞状鉄鉱層といって、現在は鉄の原材料として使われています。憧れがあって、ようやく取りに行けたものです。定かではないですが、おそらく25億年ほど前のものです。わが家の中で最も古い岩石だと思います。

──25億年もの前の岩石なんてかなり珍しい物のように感じますが、簡単に見つけられるものなのでしょうか?

岩石は、宝石と違って探すものではありません。例えば花こう岩もそうですが、地域一帯、ほとんど全部が花こう岩といった場所があります。ですので、岩石が欲しい場合は、取りにいったらだいたい100パーセントの確率で持って帰れます。

取りにいったのは、アボリジニの方々がもともと住居として使っていた国立公園のような場所でした。視界に入る地層の全てが鉄鉱石なんです。どこを見ても赤茶けた大地が広がっていて、とても感動しました。

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