──では、最後に1位の石の紹介をお願いします。
お食い初めで使った“歯固め石”です。私が生まれた集落では、生まれてから数え100日にやっていました。将来ずっと丈夫な歯でいられるように石をかませるんです。祖父が拾ってきてくれた石で、長谷川家で代々受け継いでいます。私の弟、弟の息子、私の娘もかじりました。印象深い石のひとつです。
顕微鏡で見える岩石の“履歴”
──長谷川さんは、顕微鏡で石を見るのも好きとのことですが、何が見えるのでしょうか?
岩石薄片といいまして、光が透ける0.03ミリまで石を研磨し、スライドガラスにのせます。これを偏光顕微鏡というちょっと変わった物で見ますと、色鮮やかなモザイク模様が現れるんです。
これで、どんな鉱物がどこに含まれているかがわかります。肉眼では見えない細かい鉱物がどう含まれているのかや結晶の度合いを見て初めて、岩石がどうできたものなのかが分類できます。
──このキレイな模様から、岩石がどうやって生まれたのかが見えてくるということですか?
水の中でたまってできたものなのか、マグマが冷えてたまったものなのか、そういうことがわかってきます。過去から現在までに受けた履歴が、岩石には全て残っています。ひとつの石から「これはどうやってできたのかな」「なんでここにあるのかな」と考え始めると、それだけで酒が進みます。面白いんですよね。どこかロマンがあります。
──地学だけではなく、地球史、人類史、化石を見るなら生物学などいろいろなことを知らないと思い巡らせることもできないように感じます。長谷川さんは、すでに幅広い知識を持っているように見えますが、目指すところはあるのでしょうか?
私は現代版の陰陽師(おんみょうじ)になりたいと思っています。彼らが活躍していた平安時代には洪水などのリスクを訴えられる人は、他にはお坊さんくらいしかいませんでした。陰陽師のすごいところは、リスクを政府に進言して決定に関与していたことです。それを現代に置き換えると、国交省が道路を作りたいと計画した脇で、危ないからやめておいたほうがいいと進言できる地質技術者が、まさに陰陽師だと思っています。
これは理系だけの知識では補えません。文理融合して、いろいろなものを自分で感じて、翻訳して相手に伝えて、相手の意思決定を促すための役割というのが、建設コンサルタントにはあると思っています。そういう意味でも、現代版の陰陽師にぜひなりたいですし、それを目指してやっています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら