「青天を衝け」脚本家が渋沢栄一に心底ホレた理由 作り上げた「栄一年表」はなんと270ページ!

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終盤は実業界から身を引いた老年の栄一が、社会貢献をしていく様を描いた。養育院などの福祉事業を継続し、日本が日清・日露戦争を経てアメリカとの関係を悪化させていく中、精力的に民間外交を行う。

「やはり栄一さんのパワーは普通ではないですよね。老年になってもまったく衰えない。アメリカに何度も行って敵意はないということを訴える。ただ、そこで初めて本当の意味での挫折をしたのではないかと思います。

アメリカでの日本人排斥問題に力を尽くし続けたけれど、解決はできなかった。そこから日本が軍国主義の方向にどんどん進んでしまう。しかしそれでもあきらめず、まだ日本のために何かできるはずだという欲をもって最後まで頑張り続けていた方だと思います。

栄一さんのパワフルさは羨ましい。また今を生きる私たちは、栄一さんのように自分が動けば何かが変わるという自信を持ちにくくなっている気がするのです。ただ、今だって世の中を良くしたいと思っている人はたくさんいらっしゃるはず。栄一さんのパワフルに進み続ける姿を見て、自分も何かを変えられるかもという前向きなパワーを少しでも感じてもらえたら嬉しいなと思いました」

読み込んだ資料はダンボール14箱分

大河ドラマを書くために読み込んだ資料、史料はダンボール14箱分。A4で270ページにも及ぶ“栄一年表”を作成し、膨大なデータを取捨選択して生き生きとした人物像を作り上げた。

「好評をいただいたのは、キャストの皆さんのリアリティある演技と演出があってこそ。そのおかげで、視聴者の方々が栄一さんたちを身近にいる人のように応援してくれました。脚本は書き上げましたが、最終回が放送されるまでは終わった気がしなくて、頭の中にはまだいろんなエピソードがあるので、それを空想して我慢している状態です。最終回には描きたかったことをぎゅっと詰めているので、じっくり見ていただけるとうれしいです」

小田 慶子 ライター

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けいこ おだ / Keiko Oda

テレビ誌編集者を経てフリーライターとなる。日本のドラマ、映画に精通しており、雑誌やWebなどで幅広く活躍中。

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