セドラチェクvs斎藤幸平「成長と分配のジレンマ」 「成長至上」と「脱成長」の狭間の資本主義論

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斎藤:ありがとうございます。ではまず、最初にアメリカのバーニー・サンダースやイギリスのジェレミー・コービンといった「社会主義」を掲げる政治家の人気について話したいと思います。彼らを最も情熱的に支持しているのが若者だというのは、注目すべき点です。「ジェネレーション・レフト」とも呼ばれる、ミレニアル世代やZ世代がますます社会主義的な考え方に興味を持つようになっている。

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その背景には、資本主義が、「みんなを豊かにする」という約束を果たせなくなっているという問題があります。つまり、経済を成長させることで、あらゆる人により豊かな生活をもたらすという約束です。

若者たちが直面しているのは、深刻な経済的不平等です。若い世代の多くの人たちは、不安定で低賃金の職にしかありつけていません。学費の高い英米の若者たちは、就職後も学生ローンの返済で苦しんでいますし、ニューヨークやロンドンなどの大都市の家賃は高騰するばかりです。今の資本主義を続けることは、若い世代にとっては経済破綻を意味します。

ソ連が崩壊して30年経ち、再びある種の社会主義的な考え方に若者が共鳴するのには、十分な理由があると私は思っていますが、その点、どんなふうに捉えていらっしゃいますか?

食べ物の棚が空っぽの社会主義時代のチェコ

セドラチェク:サンダース現象の盛り上がりについては、私が住む欧州の視点からは、率直なところ理解に苦しみます。なぜなら私たちは資本主義を違う方法でも利用できると知っているからです。実際、過去35年の全人口の富の増加のデータを見ると、欧州に鉄のカーテンがあった時代、つまり昔の社会主義時代と比べると興味深い傾向があります。

欧州の富裕層の富はそれほど増えず、200%増加した程度です。倍になったのは大きいですが、アメリカに比べればそれほどではありません。ましてやロシアとは比べ物になりません。チェコも貧困層や中流階級の人々さえも過去30年間の資本主義の恩恵を受けています。

ですからヨーロッパの若者は、左派に対してそれほどの情熱を持っていないでしょう。とくに社会主義の時代に空っぽの棚を経験している、ここ中欧では。私は子どもの頃、フィンランドに住んでいたこともあり、鉄のカーテンを両側から見ることができました。あるとき、祖母がフィンランドに来たことがありました。彼女が亡くなった後に、遺品を整理していたら食べ物の写真が20枚ほど出てきましたよ。彼女にとっては食べ物でいっぱいの棚がたくさんあるのが珍しかったのでしょうね。

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