セドラチェクvs斎藤幸平「成長と分配のジレンマ」 「成長至上」と「脱成長」の狭間の資本主義論

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斎藤:生産における古い社会主義的管理体制が非効率的で環境を破壊するものだったという点は理解しています。しかし、当時そうだったというだけであって、未来の環境を考えた場合、社会的に生産を管理・規制する必要があり、そのほうが環境にいいという可能性までも否定するものではありません。

なぜなら、市場で無秩序な競争を行い、際限のない資本増殖を追求する資本主義システムのもとでは、環境危機を悪化させるばかりで、危機を解決に導くことなどできないからです。現に気候変動問題は、ソ連崩壊後にますます悪化しています。私たちは環境危機の原因である、資本主義システムではない新しいシステムを作らなくてはなりません。

残念ながら、利潤を求め、経済を成長させるということは、ほぼ例外なく物・資源・エネルギーの消費の増大を伴うのです。成長と環境に悪い消費を短期間で切り離すことは至難の業です。

EUやアメリカは“緑の”資本主義をスローガンに掲げ、技術革新によって、経済成長と環境への悪影響を切り離す、デカップリングを目指していますが、技術的にそれが実現する保障はありません。しかし、気候危機を解決するには「今後30年のうちに解決しなければ、ポイント・オブ・ノーリターンを迎えてしまう」という深刻なタイムリミットもあります。二酸化炭素排出量を、大急ぎで大幅に削減し、ゼロにせねばならないのです。

ですから、実現の保証が定かでない技術革新だけに期待をかけて、経済成長を求めている場合ではないのです。例えば国家権力によって悪質な産業は止めることなども選択肢にせねばなりません。今われわれは、コロナのパンデミックよりも大きな問題に本当は直面しているのです。

パンデミックによる「資本主義の中の社会主義」

斎藤:ただ、パンデミックから私たちが学んだこともあります。つまり、われわれは緊急モードになって、やろうと思えばロックダウンもできるし、マスクやワクチンなど、どうしても必要なモノを作るよう市場に呼びかけることもできるという点です。ロックダウン中はお金を配るよう政府に要求することもできます。

こうしたコロナ対策が証明したのは、どれほど素早くわれわれが自らの行動を変えられるか、そして政府は実際、国民の命を守るために動けるのだということです。これは、われわれの政治や経済に関する想像力が広がった経験だと考えています。

市場の規制を撤廃し民営化を進める新自由主義が国民の命を守り、生活をより豊かにする最も効率的な方法だと言われてきました。しかし、そうした社会がもたらしたパンデミックと気候危機という矛盾に直面し、より社会的規制や共同生産の可能性を模索せねばならなくなったのです。

当然、旧社会主義国の失敗を繰り返してはなりませんけどね。

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