セドラチェクvs斎藤幸平「成長と分配のジレンマ」 「成長至上」と「脱成長」の狭間の資本主義論

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斎藤:欧州の中流階級がそれほど貧しくなっていないという点は注目すべきですね。若者たちも、史上最悪の状況に置かれているというわけではありません。

しかしながら、欧州においてさえ社会主義など、脱資本主義への関心が高まっているのは事実で、先に挙げたコービンだけでなく、ギリシャのヤニス・バルファキスなどの躍進にも表れています。

こうした現状を理解するために、もう1つ重要なポイントは、私たちが「人新世の危機」に直面しているということではないでしょうか? 「人新世」とは、人類の経済活動が巨大になり、今後数千年も続くような地球全体の変化をもたらし、地質学的に大きな影響力を与えている時代のことです。つまり、資本主義が地球を壊すほどの環境危機を引き起こしているのです。そのうち最も深刻な危機が気候変動です。

コロナのパンデミックは、「人新世の危機」を象徴していますが、問題は新型コロナの感染爆発は最後の危機ではなく、むしろスタートだという点です。コロナ禍は、気候変動が引き起こす慢性的緊急事態へのリハーサルでしかないのです。

パンデミックは来る気候危機の予告編

セドラチェク:私はデモ版と呼んでいます。予告編ですね。

斎藤:ええ、気候危機の予告編です。摂氏2度上がった世界を想像してください。すぐにその時はやって来ます。台風やハリケーン、山火事、干ばつが増え、海面上昇も起き、人間の手に負えなくなります。そして確実に水不足や食糧危機が起き、多数の難民が生まれます。社会に大きなマイナスの影響も生まれ、排外主義や極左運動等を生み、戦争や紛争につながるのです。

そう考えれば、Z世代の不安や怒りは理解できるでしょう。彼らは近い将来に起きる危機を非常に恐れているのです。

そして若い世代は、気候危機に対する説得力のある、魅力的な解決策を提供できない現在のシステムに失望しています。そしてもし既存のシステムが解決策を提供できないならば、今のシステムの外に求めるべきだと考えています。

だから、社会主義が次なるシステムの候補に上がっているわけです。

セドラチェク:気候危機が、人々が解くべき重要な問いであることには同意します。私たちはその解決策を知りません。この惑星でこんなことが起きたのは初めてですからね。この状況は私たちが1989年に資本主義を導入すべく共産主義から離脱したときの状況と少し似ています。当時教科書がなく、どうすべきかわかりませんでしたから。確かに気候変動の原因は、普通に考えれば、資本主義です。

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