セドラチェクvs斎藤幸平「成長と分配のジレンマ」 「成長至上」と「脱成長」の狭間の資本主義論

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セドラチェク:しかし私は、資本主義自体の問題ではないと考えるのです。なぜそう思うのかと言えば、解決策を見つける国は、いつも西側の資本主義国だからです。中国の共産主義によって発案された解決策はありません。

実際、現在議論されているCOPでの温室効果ガス削減目標に関しては、皮肉にも中国が最も後ろ向きで自らが出す公害の割合を減らす覚悟ができていないのです。公共の利益を考えるべきは、ほかでもない社会主義あるいは共産主義政党のはずでしょう? ちなみに、私は過去の経験から2カ月ほど前に挑発的な論文を書いたのですが、その内容は「資本主義は共産主義ほど環境を破壊しない」というものでした。

私はこのチェコの地で育ち、革命が起きた時は12歳でした。そして30年……、共産主義による40年間にわたる環境破壊の後始末をするのに、資本主義社会で30年かかったわけです。私にとっては皮肉でした。なぜなら子どもの頃こう思っていたからです。「私欲や利益、利己主義に左右されず、中央計画経済が実行され、民衆の幸福と公共の利益の実現のみを役割とする政治体制なのに、なぜ?」と。

公共の利益の例として私たちが吸う空気に勝るものがあるでしょうか? 私たちは同じ空気を吸っています。しかし、共産主義はその空気を守ることができませんでした。利己主義で利益を追求し、無秩序で組織化されておらず、命令でなく報奨金のみによって動くフィンランドの資本主義の人々ほどもね。これは大きな逆説です。フィンランドのビジネスマンは環境を守ろうと意図していたわけではなく、スープやジャガイモなどを売って儲けたかっただけにもかかわらず、旧チェコスロバキアほど環境を悪化させなかったのです。

資本主義システムではない新しいシステム

斎藤:チェコスロバキアなどの東側諸国のほうが、資本主義の西側諸国よりも大気汚染など環境に悪影響を与えていたとおっしゃいましたね。その点は理解します。

しかしながら、東西両陣営、どちらの体制の国々も果てしない経済成長を求めていたこと、そしてどちらも、生態系への影響を無視して近代化を求めていた、という点が最大のポイントです。東西ともに、成長を追求し、環境を破壊したという、その点においては、まったく同じ穴の狢だったわけです。

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