「成長至上」のあり方を否定することにおいてはともに一致しつつも、現状を打開する方策、システムのあり方について意見を異にし、対立する2人が出会った。かたや思春期に共産主義を経験、その苦い記憶からそこに帰ることなく資本主義において解決策を探し続けるチェコの奇才アナリストと、アメリカでマルクスに出会い、脱成長の可能性に魅せられた夢見る俊英学者との対論だ。
社会主義を支持する欧米の若者たち
斎藤幸平(以下、斎藤):セドラチェクさんの『善と悪の経済学』を読みましたが、経済成長を時に鈍化させる必要性をあなたは説いていますよね? 私も著書『人新世の「資本論」』の中で脱成長について議論し、その議論は今では日本でも多くの人に受け入れられています。
今日は「脱成長は可能なのか」について議論したいのですが、いちばんのポイントは、脱成長は資本主義の中で可能なのか、あるいは資本主義を超えた先の脱成長をめざすべきなのか、だと思います。その点について、じっくり話し合えればと思います。
セドラチェク:私の国は長く共産主義を経験しましたから、その点についても話せますね。それに、この問題を環境問題に結び付けた形で議論することも可能です。なぜなら、あなたのマルクス主義に基づきつつも現実的でエコロジカルな視点に、私はとても興味があるからです。すばらしい議論ができるでしょう。
斎藤:ええ。同意できる点と異なる点と……、議論を楽しみにしています。
セドラチェク:頭脳明晰な友人とのおしゃべりは、最高の夜の過ごし方ですからね。
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