セドラチェク:パンデミックが想像力を広げたことには同意します。この間、世界中が共産主義になったとも言えますからね。誇張した表現ですが。
斎藤:危機の時代にはみな社会主義者になるというジョークが昔からありますからね。
セドラチェク:そのとおりです。皆いくらかの給付金を受け取ったわけで、もしもパンデミックが続いても、何年かは持ちこたえられるでしょう。
資本主義国家と共産主義国家の違い
セドラチェク:しかしここで考えねばならないのは、持ちこたえられるのも、今私たちが豊かだからということです。共産主義の末期ではムリでした。1980年代にパンデミックはありませんでしたが、それでも店の棚に食料はありませんでした。飢餓にある人もいたのです。
フィンランドのような中央計画経済とは無縁の社会が、なぜチェコスロバキアなどの中央計画経済の国々よりも当時繁栄していたのか、私にとってこれは最大の謎でした。西側のほとんどの国々では、なぜか生態系、自然へのダメージが共産主義体制の国々より大幅に少なかったのです。これはちょっと皮肉です。言葉を額面どおり受け取るなら、共産主義のほうがマシなはずですから。リーダーが「明日からCO2の排出量を減らすぞ、煙突にフィルターをつける」と宣言できるはずだからです。
ところが実際は違いました。1988年、革命が本格化する前に、チェコスロバキアの北部の町々で政権に対する抗議運動がありました。あまりの空気の悪さで、息が吸えなかったのです。民衆は共産主義体制を批判し始め、その運動が首都プラハまで波及して知識人による反乱となりました。始まりは環境問題だったのです。
当時リーダーたちを批判することは禁じられていました。これが資本主義国家と共産主義国家の違いだと思います。資本主義国家は批判に対してお金を払い、批判を求め、変化を求めるのです。
新しい制度が必要だという点ではまったく同感です。しかし私は、資本主義の中で模索します。
成長、分配、生産性……、さまざまな言葉が行き交う今、資本主義の曲がり角にあって進むべき道は? このほかにも世界各地のさまざまな経済のフロントランナーたちが登場、資本主義の可能性と限界に迫る、2017年からの新春恒例の企画ならではの、骨太でスリリングな議論が番組では展開される。
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