多くのフランス人は、今年はワクチンも打ったのだから去年の分を取り返すために、外食や海外旅行など年末年始にかける予算を多めにとっていたかもしれないけど、残念ながら今年もまたお預けということになりそうだ。
くみ: 日本ではフランスのように、公共の場でマスクをしないと罰金や、違反したら罰金が課される厳しいロックダウンなどの強制力を持った措置が取られていない分、各個人に任されているところが多い気がしている。同調圧力もあって多くの人がマスク着用などは守っている印象があるけれど、それでも法的に規制されているわけではないから守らない人もいるし、着用しない自由を主張する人もいるみたい。
旅行や移動についても感染者数が減ったから早速出かけよう、という人と、まだ収束したわけではないし今が我慢どきだと引き続きの自粛を求める人と、二分されていると思う。
つまり、フランスでは政府の規制が厳しい分、各個人が自分で判断せずに政府の方針に従って自身の行動を規制したり緩和したりしているんじゃないかな。対して日本はまだ収束したという感覚を全体的に共有しているとは言えなくて、大規模なパーティーなど華やかな機会を持つのははばかられる空気が残っているのかもしれない。
「ビズ」の習慣が大きく減っている
エマニュエル:なるほどね。それからフランスでの大晦日の過ごし方は、芝居やオペラを家族で見に行ったり、友人の家で食事やダンスなどパーティーをしたりするのが主だったけれど、今年もコロナの影響を受けることになりそうだ。政府はディスコやナイトクラブの閉鎖を1月1日まで行うとし、レストランやバーも1月7日までは店内でのダンスを禁止にした。なので、今年の年末は自宅や友人宅でダンスやパーティーをするしかない、というわけだ。
この大晦日のパーティーでは午前0時の年越しの瞬間にはみんなでビズ(主に家族や親しい友人間で互いの頬にキスをし合う挨拶)をしあって、グラスを当てて乾杯をするわけなんだけれど、これもコロナで変わってしまった。コロナ以前は年越しの瞬間は、近くにいる知らない人にまでビズしていたものだけれど、ここ2年はすっかりビズの習慣も減少してしまったし、知らない人同士でグラスを当てあうのもためらう人が多くなった。
こうやってみると、伝統的な年末年始の過ごし方はかなりコロナに浸食されている感じがするね。これが今後続くとなると、精神的に参ってしまうフランス人も多くなるんじゃないかな?
くみ: そうね。日本の場合は伝統的に大晦日からお正月は家族とゆっくり過ごすイメージが根強いから、フランスのクリスマスの集まりに近いものがあるけれど、その場にいる知らない人たちともビズするフランスの大晦日の伝統が失われるといった危機感はわからないよね。