野口聡一「宇宙空間でもメンタル安定させる極意」 寝られるときに眠ることが何よりも大事のワケ

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国際宇宙ステーションにやってきた当初はなかなかうまく睡眠がとれなかった。旅行と同じ理屈で、慣れない枕ではなかなか寝付けない。睡眠時間は究極のリラックスタイムだから、心身ともに落ち着かないと眠れないものだ。しばらくは浅い眠りの日が続き、ぐっすりと眠れるようになるまでに2週間はかかった。

わたしの寝室は、居住モジュール「NODE2」にある個室。電話ボックスひとつ分くらいのこぢんまりとした空間である。観音扉になっていて、閉め切ると外部の音がほとんど聞こえない。それでも宇宙船内には機械が多いから、どうしても騒音や光が気になるクルーは、眠るときに耳栓とアイマスクを着用している。

寝袋は個室の壁面に貼り付くように置かれている。両手も外に出せるから身動きがしやすい。密着バンドで体を固定することもできる。枕付きだ。

寝具そのものは、あまり凝る必要はないとわたしは思っている。無重力だから背中が当たって体を痛めることもないし、空調のおかげで寝汗もさほどかかない。地上の寝具のように、クッション性や通気性を追求する必要は、ここ宇宙空間ではあまり感じられない。

寝坊することがあってもいい

『宇宙飛行士 野口聡一の全仕事術』(世界文化社)(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

それよりも、寝られるときに眠ることが、何より大事。寝坊することがあってもいいと思う。朝礼が始まって慌てて起きてくるクルーもいる。「あれ、なんで寝坊しちゃったんだ」みたいに言い訳して顔を出してくる。そんなことがあったっていい。

休日は、人によって、昼まで寝ていることもある。寝られるときにしっかり眠っておく。いざというときのための鉄則だ。

ちなみに、宇宙滞在中の日課に「昼寝」は取り入れていないのだが、地上ではどんどん導入したらいいと思っている。パワーナップ(power nap)といって、昼下がりの時間帯に積極的に仮眠をとると、午後の作業効率が上がることもいろいろな研究から明らかになっている。日本の企業でも取り組んでいるところがあるようだ。短くてもいいから、時間を見つけて眠れる工夫はあっていい。

野口 聡一 宇宙飛行士

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のぐち そういち / Soichi Noguchi

博士(学術)。1996年5月、NASDA(現JAXA)の宇宙飛行士候補者に選抜、同年6月NASDA入社。2005年スペースシャトル「ディスカバリー号」で、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在、3度の船外活動をリーダーとして行う。2009年、ソユーズ宇宙船に船長補佐として搭乗。2020年、日本人で初めて、民間スペースX社の宇宙船に搭乗、約5か月半、ISSに滞在した。4度目の船外活動(EVA)や、「きぼう」日本実験棟における様々なミッションを実施し、2021年5月、地球へ帰還。主な著書に『どう生きるか つらかったときの話をしよう 自分らしく生きていくために必要な22のこと』アスコム刊がある。

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