元教員が仕掛ける社会とつなぐ「複業先生」の凄み

教えるということが社会人の成長にもつながる

社会人と学校をつなぐ複業先生について取材しました。写真はプレゼンのコツを解説する入社5年目の男性(27)。「今風の若者」が学校の教壇へ。生徒たちも興味津々の様子(筆者撮影・画像を一部加工)

「子どもたちに自分の経験を伝えたい」――。そう思う社会人は少なくない。誰もが教育を受けてきたからこそ、教育の話になると熱くなってしまう。その思いを、形にするビジネスがある。

社会人を学校に派遣し、授業をしてもらう“複業先生”という取り組みだ。仕掛けたのは元小学校教師の金谷智さん(31)。複業先生とはいったい何か、なぜこのような試みが必要なのか話を聞いた。取材から見えてきたのは「学校教育ビジネスの可能性」、そして、「社会から孤立する学校」だった。

見慣れぬ“先生”が教壇に

11月のある日。東京都立葛飾野高校。創立80年を誇る学校の教壇には、見慣れぬ“先生”が立っていた。パーカー、ジーンズ、ピアス、おしゃれな茶髪……。20代の“先生”の語り口は熱っぽく、それに呼応するように、40人の生徒は真剣な眼差しを送っていた。

教壇に立つ彼らは、デジタルマーケティングを支援する企業メンバーズで働く社員たち。社のプロジェクトとして「クリエーターの社会貢献」を掲げており、その一環として1年前から教育現場に携わっている。今回は、新入社員を含めた20~30代のWebデザイナーやプログラマーら16人が、高校2年生に授業をした。

この授業を取り仕切る女性教員は、いつもと様子が違う生徒たちに目を細める。「生徒は普段“外の人”と接することってないんですよね。だから積極的になっている。自分からどんどん発言する子もいて……私としても新しい発見ですね」。

では、どんな授業なのか? この日“社会人先生”の授業を受けたのは、2年生の全8クラス。生徒は事前に「社会問題へのアクションを考える活動」として、各自で設定したテーマについて調査し、情報や意見をポスターにまとめていた。「SNS上の誹謗中傷」といった身近な話題から、「海洋汚染の解決法」「幸福とは何か」など、大学レベルの内容まで……。さまざまなテーマに対する調査が、思い思いのデザインでポスター化されている。

「社会問題の解決」を目指し、生徒が各自で設定したテーマについて調査し、ポスターにまとめた。こういった「社会全体を見渡す」授業が増えているという(筆者撮影・画像を一部加工)
次ページ初めて教壇に立つ社会人先生は緊張
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
  • 最新の週刊東洋経済
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 「お金で損しない」森永康平のマネーリテラシー講座
  • 世相をリアルに映し出す 流転タクシー
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ANAとJAL、国内線で競り合う復活レースの熾烈
ANAとJAL、国内線で競り合う復活レースの熾烈
富裕層、世代でまったく異なる「お金の使い方」
富裕層、世代でまったく異なる「お金の使い方」
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
話題の「30分で絵を描く」秘訣、驚くほど簡単4手順
話題の「30分で絵を描く」秘訣、驚くほど簡単4手順
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
メタバース革命が始まる<br>全解明 暗号資産&NFT

不正流出事件から4年。復活不可能に見えたビットコイン相場は米国主導で活況を取り戻しました。暗号資産を使ったNFTの購入、そしてNFT取引が広がるメタバースにもビジネスの機会が広がっています。日本は暗号資産とどう向き合うのでしょうか。

東洋経済education×ICT