元教員が仕掛ける社会とつなぐ「複業先生」の凄み 教えるということが社会人の成長にもつながる
「子どもたちに自分の経験を伝えたい」――。そう思う社会人は少なくない。誰もが教育を受けてきたからこそ、教育の話になると熱くなってしまう。その思いを、形にするビジネスがある。
社会人を学校に派遣し、授業をしてもらう“複業先生”という取り組みだ。仕掛けたのは元小学校教師の金谷智さん(31)。複業先生とはいったい何か、なぜこのような試みが必要なのか話を聞いた。取材から見えてきたのは「学校教育ビジネスの可能性」、そして、「社会から孤立する学校」だった。
見慣れぬ“先生”が教壇に
11月のある日。東京都立葛飾野高校。創立80年を誇る学校の教壇には、見慣れぬ“先生”が立っていた。パーカー、ジーンズ、ピアス、おしゃれな茶髪……。20代の“先生”の語り口は熱っぽく、それに呼応するように、40人の生徒は真剣な眼差しを送っていた。
教壇に立つ彼らは、デジタルマーケティングを支援する企業メンバーズで働く社員たち。社のプロジェクトとして「クリエーターの社会貢献」を掲げており、その一環として1年前から教育現場に携わっている。今回は、新入社員を含めた20~30代のWebデザイナーやプログラマーら16人が、高校2年生に授業をした。
この授業を取り仕切る女性教員は、いつもと様子が違う生徒たちに目を細める。「生徒は普段“外の人”と接することってないんですよね。だから積極的になっている。自分からどんどん発言する子もいて……私としても新しい発見ですね」。
では、どんな授業なのか? この日“社会人先生”の授業を受けたのは、2年生の全8クラス。生徒は事前に「社会問題へのアクションを考える活動」として、各自で設定したテーマについて調査し、情報や意見をポスターにまとめていた。「SNS上の誹謗中傷」といった身近な話題から、「海洋汚染の解決法」「幸福とは何か」など、大学レベルの内容まで……。さまざまなテーマに対する調査が、思い思いのデザインでポスター化されている。
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