元教員が仕掛ける社会とつなぐ「複業先生」の凄み 教えるということが社会人の成長にもつながる

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「複業先生」の事業形態は主に2つ。1つは、今回のような「企業の社会貢献」と「学校」をつなぐ方法。企業側にも人材教育メリットがあり、社員研修の一環としても利用される。企業からも学校からも委託料をもらい、両者のマッチングをはかり、現場でサポートをする。

もう1つは、応募してきた“先生”志望の個人を、学校に紹介する方法。学校からは委託料をもらい、“先生”には数千~数万円の報酬を払う仕組みだ。

いずれにせよ大事なのは“先生”と学校のマッチング。よりミスマッチを減らすために、HP上に“先生”のプロフィールや希望授業内容の一覧をのせ、学校側が選べるプラットフォームを作成している。

複業先生と学校をよりつながりやすくするプラットフォームのデモ画面。近く稼働予定(画像:LX DESIGN)

例えば、「子どもたちに税のリテラシーを教えたい」という税理士が“先生”に登録する。学校は都内近郊希望で授業は水曜日の午後ならできると記載。学校側は「税」「金融」「東京」などと検索し、彼を見つける。税理士であることも明記されていて、安心材料だ。

水曜日の午後ならあの日にしようか……予定を立てやすく、その後のやり取りがスムーズになる。どんな授業にするか、“先生”と学校のすり合わせが一番大変だというが、その負担を減らすことができる。

“複業先生の意義”とは?

代表の金谷さんは“複業先生の意義”を語る。「学校の先生って普段の仕事で手一杯。それでも、生徒のために、『外部の人に社会的な授業をしてほしい』と思っている。その気持ちに応えたい。先生の負担を少しでも減らしたい」。彼が熱い思いを持つのには、理由がある。

「LX DESIGN」代表・金谷智さん。1990年生まれ、富山県高岡市出身。東京学芸大学卒業後、民間企業、公立小学校勤務を経て、2018年に起業(写真:LX DESIGN)

富山県生まれの金谷さんは“教師一家”に育つ。「先祖6代先まで校長先生だったんです。その先も遡れないだけで、もっといるかもしれませんね」。当然、両親も教師。忙しいながらもやりがいを持って働く姿を見て、自分も教師になることが当たり前だと思っていた。

東京学芸大学に進学。「教師は外の世界も見るべき」と思い、オーストラリアに短期留学。そこで、日豪を股にかけて英語教育ビジネスを展開する起業家と出会い、「教師一本」だった彼の将来像が揺らぐことになる。

「起業に興味を持ち、シリコンバレーにも行って、ビジネスやテクノロジーを学びました。でも、どこか“憧れ”だけで動いていたかもしれません。“起業はかっこいい”というだけで……」。

大学卒業後、彼の人生は迷走する。「将来起業をするためにビジネスの基礎を学びたい」と、先生にならず、医療系の一般企業に入社。しかし、「起業のため」という生半可な気持ちでは、目の前の与えられた仕事すら満足にできない。斜に構えたプライドが、彼を邪魔していた。

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