人手不足だけど「50代は削減」日本企業のジレンマ コロナからのV字回復のネックになってきた

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先日、仕事で関わった半導体のメーカーでは外資系のアクティビストから人材流動化に向けた株主提案が2年続き、その対応で50代以上の早期退職を行うことを決めました。短期的には総人件費が下がり、収益改善に大きく貢献したようです。ただ、知見のある社員が減少したことで現場ではミスも増えて、生産性も下がってしまったようです。

同じように早期退職後に人手不足の状況がさらに悪化するケースが増えています。なかには早期退職の応募者が予定数を大きく上回り、新たに中途採用で即戦力の採用を開始。ところが採用はうまくいかず、現場が大混乱となっている会社もあるようです。ただ50代を削減すればいいかというと、そう話は単純ではないのです。

人材の配置転換で人手不足を解消する方法

では、在籍する50代以上の人材を配置転換して、人手不足の解消に貢献する方法を考えてみましょう。雇用調整を行わずに、貴重な戦力として、活躍の可能性を考えてみるのです。

まずは、問題となるモデル賃金を廃して、能力や成果に応じた報酬テーブルでリセットするのです。

一時的には賃金が下がっても頑張れば上がっていく制度にすることで、50代の配置転換はしやすくなります。当然のことながら役職定年のような一律で役割を外し、報酬を下げる仕組みも廃するべきでしょう。

役職定年制とは、ある一定の年齢に達した社員が、課長・部長などの役職から退く制度のこと。1986年に「60歳定年」が企業の努力義務になり、1994年には60歳未満の定年が禁止されました。一方で人件費の抑制や組織の若返りなどを図るために50代半ばで部長などの役職を降りることを制度化したもの。その後は大幅に報酬を下げて、定年までの残りの期間を勤務するという設計と考えられてきました。

配置転換を加速させるため、一定のタイミングで能力や意欲を再確認する「アセスメント」なども加えて、公平に働ける機会を提供することで配置転換による活躍機会を増やすことも必要です。

アセスメントとは、客観的視点で人材の能力を評価することです。「職場の仕事に対して何ができるのか?」インタビューや上司評価なども加えて、配置転換できる職場を探すのです。

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