「ふるさと納税で保護猫を救う」斬新なカラクリ 猫の殺処分ゼロを目指す「ネコリパ」の取り組み

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このように、ブランディング力、発信力は同社の大きな強みだ。それを示す例としてもう1つ、企業と連携した支援事業「ハッピーネコサイクル」についても紹介しよう。同事業への協賛企業に対してはホームページやSNS等で情報発信するほか、その企業の商品をネコリパが企画した、コラボ商品を販売するケースも多い。

お茶の水店には猫グッズの物販コーナーもある。スタイリッシュでセンスのよい商品展開もまた、ネコリパの強みだ(撮影:今井康一)

その中でも猫好きの間で注目されているのが、和歌山のネットショップ「チキンナカタ」とのコラボレーションによる「猫と、こたつと、思い出みかん。」。みかん1箱(5628円)を購入すると、ちょうど猫が1匹入れるほどの大きさの段ボール製こたつ組み立てキットがおまけについてくる。猫が入っている様子の写真がSNS上に多数アップされたことが話題を呼んだ。品質がよいのにブランド名がついていないだけでなかなか売れないみかんを、ネコリパがチキンナカタと一緒に考え、猫好きの心をつかむ商品として付加価値をつけた。

以上、ブランディングと発信力を物販やオンラインストア、企業連携で発揮し、コロナを乗り切ってきたネコリパブリック。

保護猫の譲渡機会が失われた

一方の課題が、カフェの休業、譲渡会の中止などで、保護猫の譲渡機会が失われたことだ。保護猫団体の中には、猫のためのスペースがなく、「預りボランティア」といって、猫を預かってくれる人を複数人募集し、譲渡されるまでの猫の居場所を確保しているところもある。そうした団体では、引き取った猫の行き場がなく困っていたそうだ。

「一般的に子猫が生まれるのは春夏頃と言われていますが、今は温暖化で季節を問わず生まれるんです。だから猫のレスキューは1年中あります。そして秋や冬に生まれた子猫はすぐに死んでしまったりするので、レスキューが急がれるんですね」と河瀨氏は、現代ならではの野良猫保護の大変さについても言及する。

お茶の水店にはりんご猫(同社の造語で、HIVウイルスを保持している猫。人のエイズ差別撲滅がREDとされていることにヒントを得た)専用の個室も。エイズのイメージから譲渡がなかなか進まないが、実際には発症率は低く、天寿を全うする猫がほとんど(撮影:今井康一)

同社の場合は猫カフェという猫の居場所があることが幸いしたようだ。ホームページで里親を募り、予約制で猫カフェに来てもらうことで猫との出会いの場をつくった。また、バスで行っている移動式譲渡会も、バスに入室できる人数を制限し、密にならない工夫をしながら開催していたという。

上記のように、緊急事態の最中から現在に至るまで、持てるリソースすべてを使って“ネコダスケ”に邁進してきたネコリパブリック。

ただ、残念ながら2月22日までに日本の猫の殺処分ゼロの達成は難しいようだ。しかし、同社の拠点の1つ、岐阜県岐阜市ではほぼゴールに近い状態に到達できているという。岐阜市の保健所に持ち込まれた猫はすべて引き出しており、持ち込まれた理由を追跡調査し、課題のある環境を見極めて、ネコリパでサポートに入ることを検討しているそうだ。

そして目下、注力しているのが岐阜県飛騨市の新たな支援事業を活用した、「SAVE THE CAT HIDA」である。

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