大学からの留学の早期再開を望むこれだけの理由 あらゆる問題を生む偏狭なナショナリズムを排除するために

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大学生活は4年であるが、2020年に入学した学生の場合、すでにそのうちの2年は失われている。2022年に留学が可能になるとして秋に行くとなると、4年時の就職シーズンにはまだ海外にいることになる。要するに留学するには留年するしかないということだ。

また受け入れる外国人留学生も、一部の私費留学生や国費留学生を除き、入国することができていない。そのため、留学を望む日本人学生が、外国人留学生と交流するチャンスもない。2年間の空白は、まるで鎖国時代に戻ったかのようである。

文部科学省と外務省はきちんと連携しているか

「あつものに懲りてなますを吹く」という言葉があるが、コロナに懲りて、大きな損失を生まないようにすべきであろう。グローバル化の時代で最も重要なものは、人間の交流である。とりわけ、将来を担う若者たちの交際交流は、世界にとって宝ものだといってよい。確かにオンラインでいろいろな交流は可能だが、それはあくまでオンライン上であり、人間と人間との本当の交流には至っていない。

大学関係者の多くは、すでに派遣交換留学の再開を望んでいると思う。しかし、なんといっても国家による渡航規制がこれを阻害しているのだ。まずは外務省のリスク3という規定がある。今現在も世界の多くの国では、リスク3である。リスク3とは、行かないほうがいいという意味だ。これを順守する限り、2022年春の渡航も無理である。文部科学省はかなり柔軟にはなっているのだが、外務省とそれがうまく連携できていないように思える。

また、留学生の受け入れにおいても、ビザの発行が停止または入国時期の規制が行われているために、受け入れが難しい状態にある。実際受け入れが可能になっても隔離の問題による費用や管理の問題もあり、簡単に受け入れる状態になっていない。隔離に関しては、是々非々はあるであろうが、ワクチン証明をもっていれば隔離をしない国、そうでない場合は3日間、1週間と日本よりは規制が緩い国もある。現にEU内では、すでに交換留学はかなり行われている。

さらに、今回のオミクロン株である。まだ十分その脅威の実態がわからないまま、ある意味恐怖が恐怖を呼び、2021年12月に厳しい渡航規制が復活した。海外渡航に変化がみられる矢先、また元に戻ったのである。コロナに注意するべきことは当然だが、それ以上に学生の交流が途絶えることで、失うものが大きいことも認識してほしい。

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