「4つの類型」の「国境紛争」が今後激化する理由 移民、アイデンティティー政治、遺恨、囲い込み
プーチン大統領は、ジョージア国内のロシア語圏の飛び地(南オセチアとアブハジア)の存在によって、「ロシア系住民を、どこに住み、どこで働いていようと守る」という誓約の本気度を示す豊かな機会を手に入れた。
この誓約の最終結果が、ロシアが自国とジョージア、そして問題の飛び地の間の国境地帯に確保した足がかりだ。2018年8月には、現状の国境を示す有刺鉄線のフェンスが一夜にして動かされていることが報告された。闇に紛れてフェンスの位置が変えられ、溝が掘られ、国境の移動を宣言する新たな標識が立てられたのだ。ジョージアの住民によると、その移動可能な国境は、時にはそれまでのジョージア領を何ヘクタールも取り込むほど大きく動かされることがあるという。この種の活動は衰える兆しを見せていない。
アイデンティティー政治が招く新しい国境紛争
来る数十年の間に、4つの類型の国境紛争が、より顕著になるだろう。
1つ目は、アイデンティティー政治に根ざしていると言えるものだ。アメリカの作家グロリア・アンサルドゥアは、名著「Borderlands/La Frontera: The New Mestiza」(1987年)の中で、次のように論じた。
国境は安全な場所とそうでない場所を定義し、自分たちを他者から区別するために設けられる。国境とは分割線であり、急峻な縁に沿った細長い土地である。国境地帯とは、不自然な境界線の感情的な残滓から生み出される漠然とした不明瞭な場所である。それは絶えず移り変わる状態にある。
チカーナ(メキシコにルーツを持つ女性)を自称するアンサルドゥアは、新世代の読者に、国境で体験する日々の現実を紹介した。彼女は国境地帯を「開いた傷口」と表現したが、それは国境地帯の悪徳にとらわれた人々が体験していることを、より適切に描写しているように思われた。
こうした「傷を負っている」という感覚は、次第に悪化しつつある。というのも、国境のコミュニティーが、「不法移民」に対処し、国境を守ろうとするアメリカの捜査機関の攻勢を受け止めているためだ。国境警備で語られる言葉は、越境を望んでいる人々にも、日常生活をひっくり返されてしまった人々にも関心を向けない。ドローンはメキシコとの国境沿いやアメリカ側の一帯を、ほとんど休みなく飛んでいる。市民が自分たちの所有地に監視カメラを「発見」する一方で、ワシントンの政治家たちは国土の安全を守ると約束する。だが、どんな壁や柵やドローンや顔認証技術をもってしても、他者が越境を願う気持ちを押しとどめられはしないのだ。
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