「4つの類型」の「国境紛争」が今後激化する理由 移民、アイデンティティー政治、遺恨、囲い込み
国境紛争の3つ目の類型は、新たな一連の囲い込みと私有化に起因するものである。国境は、深海底や公海、月などの新たな地域にまで広がっていくだろう。なぜなら各国がそれらの領域に対する主権を主張したり、排他的なアクセス協定を結ぼうとしたりするだろうからだ。資源の逼迫が、そうした行動に拍車をかけるに違いない。
資源の逼迫が招く国際社会の強圧的な介入
気候変動の現実が世界をさいなみ続ける中、人類の未来が危ぶまれるほど地球の管理がおろそかにされるようになったなら、主権国の国境を廃止せよという声すら上がるかもしれない。海洋の広大な領域で漁業が成り立たなくなり、陸地では開発可能な資源が枯渇するため、グローバルな資源の取り決めが新たに必要になるだろう。人が住み続けることのできる地球上の各所が、将来の争いの元になりそうだ。
2019年8月、アメリカの学者スティーブン・ウォルトは、ブラジルのような国々がアマゾン地域の効果的な管理を怠った場合、アメリカなどがそれらの国々に介入する可能性があるのではないかと、『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿した。
彼が想像したのは、2025年中のある時期に、アメリカの大統領(イバンカ・トランプ大統領ならぬ、現カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム)がブラジルに対し、「森林破壊を止めるために適切な行動を取るか、軍事介入に直面するか」という最後通牒を突きつける未来だ。興味深いことに、ウォルトはその逆のシナリオは想定していない。地球を最も汚染している国々が、その軽減を真剣に考えないからという理由で、ほかの国々から行動を起こされるということはないのだろうか。
ウォルトが言わんとしたのは、気候変動が進む中で、個別の国々が現在のような無思慮な行いを続けるなら、国際社会はより強圧的な形の介入や国境侵犯を考えざるをえなくなるかもしれないということだ。怒りの矛先を向けられるのはブラジルだけではないだろう。地球を最も汚染している国々はどうなのか。かつての帝国による影響は──彼らは、今でこそクリーンかつグリーンだと世界に向けて熱心にアピールしているかもしれないが──いつ、どこで算定され始めるのか。
水中の通信ケーブルの脆弱さは、中国やアメリカなどの主要国を含む国際社会に、地球は重要なインフラの単なる無料の置き場所ではないという事実を考えさせるもう1つのポイントかもしれない。たとえば悪天候で海底ケーブルが破損する事態はすでに発生しており、気候変動が激化すれば、より一層そうしたことが起こりやすくなるだろう。
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